大統領周辺に疑惑広がる 民主党の閣僚や次男 SKKミガス汚職
石油ガス上流事業監督機関SKKミガスの事業に絡む贈収賄事件で、汚職撲滅委員会(KPK)の捜査がユドヨノ大統領周辺に及んでいる。側近のエネルギー鉱物資源相や党幹部らが聴取を受け、大統領次男も受注業者との関係が疑われている。来年4月の総選挙を控え、相次ぐ汚職発覚で支持率を半減させた民主党がさらなる危機に直面している。
KPKは2日、ジェロ・ワチック・エネルギー鉱物資源相を事情聴取した。収賄の疑いが持たれている直属の部下、ワルヨノ・カルノ事務次官の執務室から20万ドルの現金が見つかっており、金の性格や使途などについて捜査を進めている。
ジェロ氏は2004年の第1期ユドヨノ政権から入閣し、大統領を支えてきた側近。ハンバラン競技場汚職事件では、アンディ・マラランゲン前青年スポーツ担当国務相や部下の事務次官らが逮捕されており、ジェロ氏は汚職容疑者に断定される2人目の現職閣僚となる可能性もある。
SKKミガス事件発覚以降、賄賂は民主党の大統領候補を選出する「コンフェンシ」の資金に不正流用されたとの見方が続出した。党幹部のシャリフディン・ハサン協同組合・中小企業担当国務相は「コンフェンシに多大な資金が必要なのは事実だが、すべて合法的に調達する」と否定するが、10年の同党党首選の候補者が国の事業費を不正流用したことが分かっており、党幹部の釈明も説得力に欠ける。
また、国会の党幹部にも収賄の疑いが出ている。エネルギーを担当する国会第7委員会のスタン・バトゥガナ委員長らは、SKKミガスのルディ・ルビアンディニ前長官から、事業に絡む便宜供与の「賞与」として総額20万ドルを受け取った疑いがあるとして取り調べを受けている。
ユドヨノ大統領の次男エディ・バスコロ氏(通称イバス)にも捜査の手が伸びている。ルディ前長官とともに逮捕された仲介者が、イバス氏やディポ・アラム内閣官房長官らと贈賄企業は緊密な関係にあると示唆。イバス氏は否定しているが、KPKは近く事情聴取する構えを見せている。
民主党は11年以降、東南アジア選手権大会(SEAゲーム)やハンバラン競技場建設に絡んだ汚職発覚で支持率を落としてきた。10年9月には26.1%(インドネシア調査研究センター、LSI)だったが、今年10月には9.8%(同)まで急落した。
危機感を隠せない同党のヌルハヤティ国会会派代表は、汚職事件を大統領周辺と結びつけた偏向報道を繰り返していると一部のメディアを非難する。ハンバラン事件では大統領のアニ夫人と親しい女性の関与が取りざたされ、牛肉輸入汚職でも大統領自身と親しい「謎の女性」が背後で動いたとの報道があり、大統領も火消しに追われている。(田村隼哉)