【火焔樹】人の本性を探る
巷のお掃除クラブへの印象は、黙々とごみ拾いをやって、ただただ大変な作業だと思われがちのようであるが、楽しいこともたくさんある。
日曜日の朝のスナヤン競技場は、人々でごった返している。学生の集団が地べたに座り、たばこ、落花生の皮、ペットボトルをポイポイと捨てるのを見かけると、そばに寄って、彼らの所持品と思われるかばん、携帯電話、サンダルなどをわざとトングでつまみ、ごみ袋に入れる。彼らは驚いて「ごみじゃないよ」と訴える。「あっそう」ととぼけた声を出すものの、そう簡単には返せない。「返してほしかったらごみ拾いを手伝え」と迫る。
「俺たちは清掃員じゃない」と切り返してくるが、こんな子どもたちに負けるほど柔な私じゃない。得々と説教をはじめ、しまいには、ごみ拾いを手伝わせることに成功。私が若い頃だったら絶対に手伝うことなんぞしなかっただろうに、「まだまだ可愛いやつらだ」とほくそ笑む。
屋台の周りでは、ペットボトルのキャップ、弁当の包装紙、その他何でもポイと捨てる人を見かけては、その場に駆け寄り、相手に聞こえるように「Aduh(どっこいしょ)」と声をだしながら大げさに腰をかがめ、素手で拾って見せる。
その時の反応がまちまちである。全然気に留めない人には、ムカッとくるので、はっきり「ごみはごみ箱へ捨てましょう」と言って立ち去る。「あ、ごめん」と言う人には、「Tidak apa apa(大丈夫ですよ)」と微笑みかける。不機嫌そうにする人には何も言わず、ちょっとにらみつけてから速やかにその場を立ち去る。
こうやっていろんな人と対峙していると、人の本性のようなものが見えておもしろい。逆に、「いやらしいやっちゃ」と性格を疑われていること間違いなしだろうが、ごみのない街を作ろうと一度立てた志は、こんなことで凹(へこ)むほど柔じゃない。
それでもやっぱり一番なのは、日曜日の朝から汗を流せることである。終わった後の爽快感は格別だ。お陰でゴルフの回数が減って腕前が落ちることを心配するも、そんなに誇れたスコアでもないし、ジャカルタのごみが減れば、それでいいかなんて‥
私のゴルフのスコアとジャカルタのごみは当面減りそうな気配がない。トホホ‥(お掃除クラブ代表・芦田洸)