「洪水注意報発令中」 豪雨予報、対策に遅れ ジャカルタ

 今年1月「5年に1度」とされる大洪水が発生し、ジャカルタは首都機能が完全にまひする被害が出た。12月から1、2月に雨期のピークを迎え、豪雨も予測されているが、州政府の洪水対策は遅れている。
 国家防災庁(BNPB)によると、13日、数時間降り続いた豪雨で河川が氾らん、南ジャカルタのチプリルなど首都25カ所で10〜40センチ冠水した。隣接するバンテン州南タンゲランのビンタロでも冠水が確認された。首都大洪水から10カ月。首都圏は再び雨期に入ったが治水は遅々として進んでいない。
 ジャカルタ特別州政府の洪水対策は▽州内42町に洪水対策要員を置く▽ポンプ場に監視カメラ設置▽洪水頻発地域200カ所改修▽160河川改修▽12貯水池改修▽ポンプ73台修理▽雨水を浸透させる「浸透井戸」1958基の設置▽住宅街を通る排水溝の清掃などだ。
 アホック副知事は10日、州の洪水対策のうち実施できたのは20%に過ぎないと明らかにした。河川のうち884本が30年間1度も改修されていないことが明らかになり、排水ポンプ73台のうち11台は故障している。貯水池の容積拡大も目標の20%にとどまった。北ジャカルタのプルイット貯水池改修では州と重機リース業者が契約をめぐり対立。地元メディアによると60ヘクタールの大きな池をたった2台のショベルカーが浚渫している有様だ。
 首都ではおおよそ5年に1度、大洪水が起き被害を出してきた。1月の大洪水の被害額は約20兆ルピア。中央ジャカルタ・メンテン地区の堤防が決壊し、ホテル・インドネシア前が茶色い水を被った姿は国際ニュースになった。洪水の度に包括的な対策は検討こそされるものの実施にはなかなか至らない。州政府は水源のボゴールとデポックにダム4基と貯水池を、臨海地帯に人工島と大型防潮堤を建設する計画を策定してはいるが、めどは立っていない。
 ジャカルタの雨水排水は主に東西の放水路が担い、首都中心部の雨水はプルイット貯水池からポンプで海に押し出す仕組み。最も洪水が頻発するチリウン川は東西放水路の真ん中を流れる。流域の一部では改修が進むが、被害のひどいカンプン・ムラユ周辺では「洪水カンプン」の移転が滞り改修は留め置かれる。
 洪水と高潮が同時に起きれば首都は水に浸る。北ジャカルタの臨海地域では満潮時の海水流入が頻発している。公共事業省のデータによると、2011年時点でジャカルタの土地の40%が海抜ゼロメートル地帯。2020年には首都の半分が海抜以下になる。地盤沈下の原因は工業、生活用水を確保するため地下水を組み上げることだ。(吉田拓史、8面に関連)

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