元中銀副総裁を逮捕 官側で初の強制捜査 KPK センチュリー急転直下


 2008年に破綻した旧センチュリー銀行(現ムティアラ銀行)の救済で、職権を乱用し、多額の公金を注入したとして、汚職撲滅委員会(KPK)は15日、ブディ・ムルヤ中銀元副総裁(金融政策担当)を汚職撲滅法違反の疑いで逮捕した。センチュリー銀の経営者には銀行法違反の罪などで有罪判決が下っていたが、中銀側で逮捕者が出るのは初めて。
 中銀は08年9月のリーマンショックの後に経営破綻したセンチュリー銀を救済するため同年11月、同銀の自己資本比率が中銀内規で定める貸与条件の8%を大きく下回っていたにもかかわらず、短期融資を承認。当初6700億ルピアとしていた支援額が最終的には10倍の6兆7600億ルピアにまで膨らんだ。ブディ容疑者は職権を乱用して救済を決めたほか、同銀元オーナーのロバート・タントゥラー受刑者から10億ルピアの現金を受け取った疑いも持たれている。
 ブディ容疑者の弁護人のルフット・パンガリブアン氏は同日、「中銀は『最後の貸し手』として法律で規定されている」として、資金注入の正当性を主張。さらに「銀行部門を直接的に処理していたのはシティ・ファジュリア元副総裁(銀行規制担当)だ」と指摘し、ブディ容疑者の関与を否定した。
 KPKは昨年11月、両元副総裁が捜査対象として浮上したことを発表していたが、健康上の問題を理由に、シティ容疑者は捜査対象から外れているという。
 事件では、タントゥラー受刑者のほか英国籍のラバット・アリ・リズビ共同オーナー(欠席裁判で有罪)、サウジアラビア籍のヘシャム・アルワラク共同オーナー(同)、元頭取のヘルマヌス・ハッサン・ムスリム受刑者の刑が確する一方、政府・中銀の政策決定者の刑事責任の有無は明確にされていなかった。
 KPKは5月、ワシントンに捜査員を派遣し、救済決定当時に蔵相だったスリ・ムルヤニ世銀専務理事への任意聴取を実施。中銀総裁だったブディオノ副大統領の責任の有無も含めて、事件の全容解明に意欲を示している。KPKのアブラハム・サマッド委員長は「捜査はブディ容疑者で終わらない。他の人物の関与も調べ続ける」と話した。
 ずさんな監査体制や不透明な政策決定などが露見したセンチュリー銀救済問題をめぐっては、国会がユドヨノ政権を攻撃する一大政局となり、スリ氏が蔵相を辞任する事態に発展した。野党からは、センチュリー銀には国営企業や中銀職員が運営する財団などの口座もあり、これを守るために中銀が異例の措置を取ったとの指摘も上がっている。(道下健弘)

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