止まらない人口増加 停滞する家族計画 増える10代の母親
世界第4位で2億4千万人のインドネシアの人口増加に歯止めが利かない。特に10代の女性の出産が増え、全体の出生率も高いままだ。食糧需要の増大などの悪影響を防ぐため、政府が家族計画を再び活性化させ、人口抑制に優先して取り組むよう求められている。
ファスリ・ジャラル国家家族計画・人口庁(BKKBN)長官によると、1人の女性が一生に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率は2002〜13年、2.6にとどまり、15年までの目標とする同2.1の達成が悲観視されている。現在の人口増加率は年間1.49%。1日当たり1万人の新生児が生まれる計算になる。
国連人口基金(UNFPA)が8日発表した世界人口白書によると、インドネシア国内では毎年24歳以下の女性170万人が出産し、うち10代の女性は約50万人に上る。UNFPAインドネシア事務所のホセ・フェラリス代表は「10代で妊娠する女性のほとんどが農村地域の低所得層の出身で、教育水準も低い」と指摘した。
BKKBNが今年9月に発表した12年版インドネシア人口統計・衛生調査(SDKI)によると、15〜19歳で出産した女性の数は07年の千人中35人から、12年の同48人に増加した。
背景には家族計画(KB)の停滞がある。スハルト政権は国家開発計画の一部として人口抑制を強化。「子どもは2人で十分」とスローガンを掲げた看板なども全国各地に設置。米国や国連機関などの援助も得てKBを推進した。70年代に5.6%だった出生率を91年に3%まで抑制。スハルト氏は89年、UNFPAから国連人口賞を受賞した。
ファスリ長官はKBが政府の優先政策ではなくなったとの見方を否定。KB向けの予算も今年の2兆6千億ルピアから来年は2兆8千億ルピアに引き上げ、地方交付金として4千億ルピアを配分すると強調する。だが自治体によってはKBは後回しになり、交付金のほか、十分な地方予算を確保していないところも多いとしている。
現在、村落でKB周知や避妊具配布を担う専門員は約8万村に2万1600人。公務員ではなく、村の有志らが低報酬で協力している。人員不足が原因で、低所得者層対象に実施してきた避妊具や避妊薬の無料配布なども滞りがちだという。
13年10月時点で、子宮内避妊器具(IUD)の利用者数は294万1290人、避妊手術を受けた女性は90万5163人、避妊手術を受けた男性は18万6640人、コンドーム使用者は71万1946人。人口増の一方で利用者数は伸び悩んでいる。
アグン・ラクソノ公共福祉担当調整相は「家族計画を再び活性化させ、より多くの市民に情報を届ける必要がある」と発言。地方政府にも家族計画を優先して取り組むよう求めた。
BKKBNは現在、独立機関の病院認定委員会(KARS)に対し、病院の認定要件に家族計画を加えるよう求めている。また、より多くの病院が無料の避妊具を提供できるよう働きかけていく意向だ。(宮平麻里子)