混迷の3年終わらず 「手切れ金」めどつくか バクリーのブミ出資解消

 アブリザル・バクリー氏(ゴルカル党党首)の一族が率いるバクリーグループは来月中旬までにインドネシアの石炭開発を手がけるブミ(ロンドン証券取引所上場)への出資解消を目指している。共同創業者との取締役会紛争に巨額の不正流用疑惑と、常に揺れてきたブミ。バクリーが解消に必要な「手切れ金」を捻出できるかは危うく、設立からの「混迷の3年」はすんなり終わりそうにない。大統領選への出馬を表明しているバクリー党首の選挙戦にも影響しそうだ。
 ブミは7日、バクリーとの資本関係解消をめぐり取締役会が来月4日に投票をすると発表した。発表によると、株主が同意した場合は▽ブミが保有する石炭開発ブミリソーシーズ(インドネシア、バクリー傘下)株29.2%をバクリーが5億100万ドルで買収▽バクリーは筆頭株主のサミン・タン氏にブミ株24%を2億2300万ドルで売却▽ブミが得た売却益のうち4億ドルを特別配当などの手段で株主に還元する―の手順をとる。
 実質的な株式交換となる取引を来月中旬までに完了させ、両者の資本関係を解消する計画。これに伴いバクリーは2億7800万ドルの現金を用意する必要がある。バクリー側は8日、5千万ドルの担保を第三者の口座に用意したことで、現金調達のめどが付いたとした。バクリー広報は「関係解消は株主の価値を修復する。それを支援したい」と期日通りの解消に自信を見せた。
 だが、ブミのニック・ヴォン・スキルディング最高経営責任者(CEO)は8日、バクリーが現金を調達できるかに懸念を示した。
 「われわれは(バクリーが)現金を融通できるという保証を求め続けてきた。だがバクリーは厳しい状況下にある」。バクリーが進めてきた傘下民放テレビ局の売却交渉が、9月に決裂したためだ。12億〜20億ドル規模での売却を見込んでいたが、公算が崩れた。傘下企業の多くが過剰負債を抱えるとされるバクリーが現金を確保できるかは不透明だ。
 さらに、財務問題も乗り越えなくてはならない壁だ。今年5月にブミは決算報告を公開できず証券取引所が取引を停止。6月にはバクリーに近いとされるインドネシア人のロサン・ルスラニ元取締役によって、1億7300万ドルが使途不明となったことが発覚した。ロサン氏は年内の全額返却を約束したが、最初の返却期日である9月末までの3千万ドルを守れなかった。
 英フィナンシャルタイムスによると、金融行動監視機構(FCA)は2012年決算報告に記載された取引に関する情報開示の規定違反をめぐりブミの監査を開始。インドネシア当局の捜査資料の提供を受けた英国の重大不正捜査局(SFO)は報告書には開示されていない情報が多くあると指摘し、相手が明確でなく、有益とは思えない取引が多いと明らかにしている。(吉田拓史) 
◇ ブミ 英国人投資家ナサニエル・ロスチャイルド氏の投資会社にバクリーグループの石炭事業を組み込み10年に共同創業。石炭市場が冷え込む中、経営権と不正流用疑惑をめぐり、双方が2年以上、取締役会で紛争を繰り広げた。昨年の最終損益は24億ドルの赤字。

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