信長と戯れる en塾公演「バックトゥザ戦国!」 来年日本公演へ
インドネシア人学生による日本語ミュージカル劇団「en塾(エンジュク)」は2、3日、中央ジャカルタのジャカルタ芸術劇場で、第5回公演「バックトゥザ戦国!」を上演した。
日本の戦国ブームを下地にした物語。インドネシア人留学生が時空をつなぐ不思議な扉で現代日本と戦国時代を行き来する筋書きだ。戦国時代に迷い込んだ留学生は、木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が信長の草履を懐で温めていたエピソードから、桶狭間の合戦、姉川の戦いなどを垣間見る。そのうち留学生と織田信長との間で、時代観念のギャップを越えた交友が生まれる。信長が現代の大学祭に紛れ込んで、喫茶店のウェイトレスになるコミカルなシーンは観客の笑いを誘った。インドネシア人の観客にも分かる平易な説明と歌、ダンスを交えて、笑いとシリアスな要素が入り交じる構成だ。
最後2つの時代を結ぶ扉が壊れた後、本能寺の変で信長が「敦盛」を舞って果てるラストシーンは観客が固唾を飲んで見守った。赤い炎に囲まれる中、「夢幻の如くなり」とうたう白装束姿の信長の頭上をはらはらと桜の花びらが散る。
信長を演じたアリオ・アクダさんは「信長のイメージを傷つけないよう演じるのに腐心した」と語った。俳優は戦国時代の言葉、着物の着こなし、戦国時代の人間の所作を再現するのに苦労した。着物製作、舞台音楽の作曲録音も大学生らの劇団員が自ら行っている。
en塾は2009年の初演から「かぐや姫」「浦島太郎」「雪女」に材を取った日本昔話三部作を上演した。昨年は大正時代の下町を舞台にした「我が輩はニャンコである」に挑戦した。
来年4月は熊本、東京で公演し、東日本大震災の被災地も訪問する。同劇団が作曲した復興ソング「桜よ」も歌う予定だ。(吉田拓史、写真も)