基礎技術普及で貢献 溶接セミナーに500人 岩谷産業

 産業用ガス製造・販売の岩谷産業は28日、インドネシアの技術者と学生を対象に溶接技術に関するセミナーを開いた。今年2月に同社幹部が関西経済連合会の経済使節団として来イした際、基礎溶接技術の普及に貢献することでインドネシア政府と合意したことを踏まえたもの。技術者の基礎レベルを底上げし、自動車、二輪車、建機など日系企業の進出を下支えする基盤の構築を目指す。同社は長期的には事業拡大につなげるとともに、技術者の賃金上昇につながるような資格制度の導入も視野に入れ、来年以降も継続してセミナーを開催する方針だ。
  
 講演では、一般社団法人日本溶接協会(JWES)国際活動委員会の平田好則委員長が、「溶接プロセスが介在する製品は、さまざまな工業分野でグローバルに事業展開していくために不可欠なものが多い」と指摘。そのため、完全な接合技術が開発されるのを待つことはできず、企業は現行の技術を進化させながら高性能な製品を低価格で市場に供給する必要があると強調した。
 平田委員長のほか、神戸製鋼所溶接事業部門技術センターの清水弘之溶接開発部長ら4人が講演した。 
 同社は昨年まで年に1度計6回、自社工場のある西ジャワ州のカラワン工業団地(KIIC)で、取引先企業の技術者らを集めて溶接技術セミナーを開いてきた。
 今回はインドネシア大学(UI)などの学生80人を招くなど、「技術普及で貢献したいという意味合いが強く、営利目的の強かったこれまでのセミナーとは趣旨は全く別」(同社)という。 
 さらに、今回のセミナーはジャカルタ中心部のホテルで開き、KIIC以外の工業団地の参加者も来場しやすいよう配慮。これまでの約200人から2倍以上となる500人が来場した。
 同社は1997年から10年間、中国・大連市で溶接技術セミナーと技術コンクールを主催。優秀者に対して、大連市が賃金上乗せにつながる技術資格を付与する体制を構築し、技術普及を進めてきた実績がある。
 同社の牧野明次会長兼CEO(最高経営責任者)は「今回のセミナーは第一歩。将来的には大連市のように資格制度を絡めた技術普及で貢献していきたい」と話した。(赤井俊文、写真も)

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