米中景気回復で光明 輸出増に期待広がる 仕向国の多角化も急ぐ
米国、中国の景気回復で、インドネシア経済が好転するとの期待が高まっている。懸念だった米国の緩和縮小は来年になる可能性が高いとみられており、仕向国の多角化などの課題克服が急がれる。
「インドネシアを含む新興国は現況を歓迎する」。ハティブ・バスリ蔵相は18日、中国の第3四半期の経済成長率が7.8%で3期ぶりに前期を上回ったことを受け、地元メディアにこう語った。
5月に米国の金融緩和縮小観測が持ち上がって以降、新興国から資金が流出した。インドネシアも大きな打撃を受け、ルピア安に一段と拍車が掛かった。一時は「通貨危機再来」の可能性も取りざたされるほどだった。だが中国の需要減などで低迷していた主要輸出品目の石炭価格が持ち直す期待もある上、8月以降株価は上昇基調でルピアも安定。同相は「輸出が増え、経常赤字は減少するだろう」と顔をほころばせる。
中国、日本に次ぐ3番目の輸出先である米国は、自動車や住宅販売など個人消費が緩やかに回復している。債務上限引き上げをめぐり混乱したが、デフォルト(債務不履行)は一旦回避。再び資金流出が起こる可能性がある緩和縮小は2月以降との見方が多く、インドネシアは対策を練る猶予もある。
これらの見通しにルピア安による競争力上昇もあり、輸出業界は来年の業績の大幅改善を見込む。家具・ハンディクラフト協会(AMKRI)のスノト会長は19日、「欧米の市場が回復する」として、今年の見込みより25%増となる25億ドルの輸出を予測。インドネシア繊維協会(API)のアデ・スドラジャット会長も業界の輸出の半分を占める米国、欧州の回復で今年から8%増えると話した。
リスク分散のため、既存の輸出先だけでなく新規市場開拓も急ぐ。スノト会長によると今年7月までの家具輸出額は11億ドルで昨年と横ばい。これまで多く輸出していた相手国への額は減ったが「(これまでの主要輸出先以外の)非伝統的な輸出先」を増やして埋め合わせたという。
◇アフリカ市場に関心
中東やアフリカ市場への関心も高まっている。アフリカでは、ナイジェリアやエジプトでインドフードのインドミー(即席麺)が存在感を高めているほか、英字紙ジャカルタ・ポストによると、すでに化粧品や繊維メーカーが販路開拓を図っている。製品をアピールするため、インドネシア・アフリカ貿易協会(IATA)はアンテナショップを来年、ナイジェリアやカメルーンに設置する方針だ。
一方、「インドネシア製品の品質の良さには驚くが、課題は販促」(サルマン・アル・ファリシ駐インドネシアUAE=アラブ首長国連邦=大使)とみられている。従来の仕向国への輸出も伸ばしつつ、競争力のある製品の新市場への売り込みが、中長期的な貿易収支安定の鍵になりそうだ。(堀之内健史)