シンガポールで密会 バンテン州知事と元憲法裁長官 県知事選勝訴に便宜か 親族の事業独占1兆ルピア超
バンテン州ルバック県知事選挙の結果の可否を問う訴訟をめぐり、ゴルカル党所属のラトゥ・アトゥット・チョシヤ同州知事やその弟、訴訟を担当するアキル・モフタル元憲法裁長官がシンガポールの高級ホテルで面会し、元長官が同党公認候補を勝訴させるための便宜を図った疑いが浮上している。一方で、州内で独占体制を築いたと批判を浴びるアトゥット知事には、親族で総額1兆ルピアを超える事業を掌握していたとの指摘もあり、縁故主義や癒着の全容究明を訴える声が強まっている。
地元メディアによると、アトゥット知事は9月21日、アキル元長官と同じ飛行機に乗り、ジャカルタを出発、シンガポールに到着した。先に同国を訪れ、F1レースを観戦していた弟のトゥバグス・ハエリ・ワルダナ容疑者=贈賄容疑で拘留中=を呼び出し、JWマリオット・ホテルで3人が合流した。
アキル元長官は23日、アトゥット知事は25日に帰国。ハエリ容疑者は弁護士のスシ・トゥル・アンダヤニ氏を通じ、勝訴への便宜供与の報酬として10億ルピアを用意したとみられる。
汚職撲滅委員会(KPK)はこれまでの捜査で、シンガポールでの密会について確認した。アトゥット知事がルバック県知事選だけでなく、州内の複数の首長選挙の結果の可否を問う訴訟に関与しているとの見方を強め、同知事やハエリ容疑者らの関係者の捜査を進めている。
憲法裁は選挙結果の有効性を判断する権限を持つことから、KPKはゴルカル党の元国会議員でもあるアキル元長官のほか、他の憲法裁判事8人を聴取し、収賄関与の有無を調べている。
アトゥット知事の親族が州県市の首長や各自治体幹部などの要職に就いていることについて、親族の資金洗浄(マネーロンダリング)の疑いも強まっている。
非政府組織(NGO)汚職監視団(ICW)は、同州の無償援助や社会支援の総額が急増していたと指摘。2009年は740億ルピアだったが、10年は2907億ルピアと4倍になり、11年は3904億ルピアに達した。11年にKPKへ告発したが、捜査は進んでいなかったという。
また、アトゥット知事の親族がバンテン州の事業を独占していたことを示す事例を挙げ、親族が保有する企業による事業獲得、カルテルなどが横行していると指摘。08〜13年、知事が直接運営に関与したとみられる企業10社、親族の24社などが総額1兆1480億ルピアの事業を独占した疑いがあるとの推算を示し、KPKに全容究明を訴えている。