政界で「謎の女性」暗躍? 「内閣改造に影響力行使」 汚職問題のPKSが発信源 大統領が激怒「1000%嘘」
イスラム保守の福祉正義党(PKS)は前党首らが起訴された牛肉輸入に絡む汚職疑惑をめぐり、ユドヨノ政権と密接な関係を持つ女性が政界で暗躍していることをほのめかした。疑惑を発端にした一連のスキャンダルで深手を負ったPKSが、疑惑を政権に飛び火させようとする格好だが、ユドヨノ大統領は「千%嘘」と否定。この「謎の女性」の正体を突き止めるよう諜報機関に調査を命じた。
騒動の鍵を握る「ブンダ・プトリ(プトリ母さん)」と呼ばれる女性の存在は、8月末の汚職法廷で発覚した。汚職撲滅委員会(KPK)が証拠提出したルトフィ・ハサン・イスハク被告(PKS前党首)の元秘書の盗聴記録は、元秘書と女性が「ルトフィ前党首とプトリさんが内閣改造で相談した」ことに触れていた。PKS所属のススウォノ農相は今月3日の公判で、前党首と女性の会談を副大統領の妹が認知していたと証言。さらにルトフィ前党首が10日、元秘書の公判で「プトリさんは大統領に近い」「プトリさんは顧問と顧問をつなぐ役割と聞いた」と証言し、騒動に火がついた。
地元紙は9月中旬からプトリさんが農業省園芸総局長の夫人シルフィア・ショレハ氏とみられると報じてきた。ハサン前党首は同公判で裁判官から女性が誰かと問われると「知らない」と語り、含みを持たせた。テンポ電子版が政府高官の談話として報じたところによると、高官はプトリさんから「金を出せば出世させると提案された」ことがあり、「プトリさんが調整し、副大統領官邸で勉強会を開いている」という。
ルトフィ前党首の証言に対して、政権側は激しく反論した。ユドヨノ大統領は10日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合から戻ったハリム空港で記者会見を開き「内閣改造の情報は私の家族ですら知らない。副大統領と内閣官房長官、関係のある調整相としか話をしない」と否定。「ルトフィ前党首は千%嘘をついている」と声を荒げた。
PKSはユドヨノ政権2期で与党だが、政権攻撃を繰り返してきた。PKSの支持率は牛肉輸入汚職疑惑のあおりで急落。疑惑の長期化は来年の総選挙に響きかねない。
ユドヨノ大統領と周辺をめぐるスキャンダル騒動では、2006年に「大統領の家族や側近が実業家から高級車を受け取った」と弁護士が声明を発表したものや、翌年に当時の国会副議長が「ユドヨノ大統領が士官学校に入る前に結婚歴があった」と発言したものがある。いずれも大統領は名誉毀損で告訴し、発言者に有罪判決が下されている。