政府交え労使交渉 フリーポート紛争  鉱山周辺で封鎖続く

 フリーポート労組紛争の先行きが見えない。九月に始まったフリーポート・インドネシア(FI)社の賃金ストは、先月十日の労働者と治安部隊の衝突を経て、同社の開発する鉱山周辺での射殺・発砲事件が発生するなど泥沼化。政府・自治体を交えた労使交渉は難航しており、問題の早期決着は難しそうだ。世界最大級の金・銅の埋蔵を誇る巨大利権、トゥンバガプラ鉱山をめぐり、中央・地元の政治勢力、独立派、フリーポート社など各者の思惑が交錯している。
 スト前の九月上旬から賃金交渉は開始していたが、両者の要求額が離れており、難航してきた。ティミカ市内での死者二人を出した労働者と治安部隊の衝突以降は、労働者側の国会第三委員会とミミカ県が交渉に参画している。
 労組は当初、現行の一時間あたり一・五―三・〇ドルの賃金を一七・五―四三ドルへと引き上げるよう要求していたが、一日には七・五ドルのベースアップ(約四―六倍増)まで下げた。フリーポート社も賃上げなしから、二〇一二年までの段階的な三〇%増まで提示額を上げたが、まだ溝は深い。
 交渉は現在、ミミカ県の仲裁を受け停止。二十一―二十九日に交渉再開が予定されている。
■我慢比べ続くか
 賃金交渉の一方で、労働者は先月十日から続けている道路封鎖を続行。鉱山から二十八キロ地点を占拠し、二日には鉱山から二十一―三十キロ地点の鉱物運搬用のパイプラインを破壊した。
 フリーポート社の操業は、長期化したストの影響を受け、著しく落ち込んでいる。先月末には想定外の要因により売約が履行できないとするフォースマジュール(不可効力)を宣言。今月三日、エネルギー鉱物資源省はフリーポート社の金・銀・銅の生産はフル稼働時の五%程度と明らかにした。一方、今月以内のスト中止観測が上がるなど労働者側にも今年二回目となった長期ストによる疲弊がうかがえる。
 これを受け、警察機動隊・国軍による特別チームは鉱山から二十八キロの地点で封鎖を続ける労働者の強制排除を検討している。だが、強制排除が新たな事件の呼び水になるとの観測がある。ミミカ県議会のカレル・グウィジャンゲ副議長は「強制排除は先月の衝突事件のような新たな暴力を生む」と警鐘を鳴らす。
■NGOら腐敗追及
 加えて、NGO、地元メディアは治安部隊への警備費拠出疑惑でフリーポート社、国軍、警察らを追及。警察は受領を認めたが、同社は合法と主張した。ウィキリークスが暴露した公電はフリーポート社と治安部隊が鉱山警備で協力関係にあることを報告している。さらに三日には、フリーポート社が政府に納めるロイヤルティーを少なく見積もっていた疑惑も浮上し、泥仕合の様相を呈している。
 政府は同社とのロイヤルティー契約の見直しに強い意欲を示している。ジェロ・ワチック・エネルギー鉱物資源相は「労使紛争が終われば、契約交渉を行いたい」と主張。ハッタ経済担当調整相も先月、同様の発言を行った。さらに鉱山のあるミミカ県は同社の株式の取得を目指し、保有率を当初は二―三%、将来的に五%ほどに増加させたい意向。同県副知事は取得を「利益を得るためではなく、地元の会社の操業に責任を持つため」と説明した。
 フリーポート社によると、同鉱山には今後二十―三十年間の採掘が可能な潤沢な金・銅の埋蔵があるとされる。二〇一五年以降は地下への採掘を進める計画。世界的な鉱物価格の高騰は続いており、採掘が続けば鉱山は従来以上の莫大な利益を生み出すことになる。

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