21歳未満の飲酒禁止 店頭で年齢確認へ 州独自の規制検討
ジャカルタ特別州は21歳未満の飲酒を禁止する方針を固め、州独自の規制の検討に入った。アルコール飲料の販売業者に購入者の年齢を確認させ、違反者には罰則を科す。飲酒運転による重大事故の発生が社会問題になる一方、最高裁が6月に飲酒年齢を定めた大統領令を無効としたことで、規制に空白が生じていた。
アホック副知事が13日、市民団体「飲酒反対運動」のファヒラ・イドリス代表(ファフミ・イドリス元工業相の娘)やインドネシア大学講師らと面談した後、州政府の方針を明らかにした。
州はアルコール飲料自体は禁止しないが、未成年が安易に入手できる状況を改善すると説明。購入者の年齢を確認する制度を設け、21歳未満に酒類を販売した事業者には警告を発し、複数回違反した場合は営業禁止処分とするなどの提案に賛意を示した。
未成年の急性アルコール中毒や飲酒運転による事故防止を図るのが狙いで、担当部局に内容の調査を指示。規制内容は州知事令に盛り込むほか、州議会が政令案を策定する。
ファヒラ代表は、急増するコンビニなどでアルコール飲料が容易に入手できる環境になり、購入者の年齢も確認せず、販売されていることを問題視。販売店に消費者の顔写真を記録させ、当局に報告するなどの手法も提言した。「規制が施行された場合、『監視対象になる』ということを消費者に周知したい」と話し、副知事の方針を歓迎した。
中央政府は1997年の大統領令で、25歳未満の飲酒を規制している。しかし、酒類のラベルでは規制年齢を「21歳未満」と表示することが定着するなど、規制は有名無実化していた。
加えて最高裁が6月、アルコールの濃度ごとに販売・提供場所を規定していたこの大統領令を「市民生活の秩序維持に資さない」として無効と判断。中央政府による新たな規制の動きは進まず、各自治体の裁量に委ねられていた。
首都圏では近年、飲酒運転による重大事故や、酔っぱらいによるけんかが刑事事件につながる事案が続発。安全性の保証されていない密造酒などを飲み中毒死する事件も起きた。飲酒反対運動のまとめでは、毎年全国で少なくとも1万8千人が飲酒に関連する病気などで死亡しているという。
一方、新規制の実効性には早くも疑問の声が挙っている。英字紙ジャカルタ・グローブは、州政府が酒類の提供禁止を指導した断食月の期間中でも、湯のみやコップに酒類を注いで「偽装」する店舗が多いことを例示。「酒類販売に関する規制の影響は未知数だ」としている。(道下健弘)