キリスト教町長に辞任要求 ムスリム多数のレンテン・アグン 南ジャカルタ
ムスリムが多数派の地区の首長としてキリスト教徒はふさわしくないとして、南ジャカルタ区のレンテン・アグンの住民が7月に就任したスサン・ジャスミン・ズルキフリ町長の辞任を訴えている。州政府は「一部住民の要求」と拒否している。
住民は28日、町役場前のデモで「地域の多数派の宗教の人物を郡長にすべきだ」と主張。プロテスタントで、しかも女性のため、イスラムの宗教行事に参加できないなど、地域社会の活動に支障が出ると指摘した。
デモに先立ち住民は26日、州に町長の解任を求めて住民登録証(KTP)の複写や署名を提出したが州側は拒否。ジョコウィ知事は「デモ参加者は地元住民ではなく外部者」との見方を示した。
アホック副知事は「住民の抗議だけで町長は替えられない。職務に問題がなければ、宗教や性別だけを理由に反対すべきではない」と批判。6カ月ごとに町長らの業績を評価し、低評価の場合は異動も辞さないが、宗教を理由に解任することはないと強調した。
ジョコウィ知事は今年、縁故や癒着が横行する町長や郡長の旧来の昇進制度を廃止。透明化を図り志望者を公募し、ネット登録や公開試験などを経て審査し、合格者を各地に配置した。
スサン町長はインドネシア大政治社会学部で行政学を修めた後、20年以上にわたり、州家族計画局職員を務め、昨年、中央ジャカルタ・スネン町役場のインフラ課長に就任。町長試験に合格し、7月にレンテン・アグン町長に抜擢されたばかり。住民からの解任要求に対し、スサン町長は「住民のために通常通り働くだけ」と話している。
地元メディアは、20人以下の小規模なデモや1500人を超えたとする署名運動などを連日報じているが、町長の宗教問題は注視していない。新町長に対する住民の声として「ラマダン(断食月)中も生活必需品を熱心に配布していた」「前の町長より容易に会える」「行政手続きが簡易化された」などと好意的な声を伝えている。
(堀之内健史)