バクリー降ろしあおる ゴルカル党で内部対立 「百戦錬磨」アクバル氏
ゴルカル党で中央から地方支部への助成金未配分問題が浮上した。地元各メディアによると、アクバル・タンジュン最高顧問会議議長周辺はこの問題を10月の代表者会議で取り上げ、アブリザル・バクリー党首の党大統領候補の撤回につなげようとあおっている。早々と大統領選出馬を決め、大々的な広報活動を展開してきたバクリー氏の足元がぐらついている。
国会第1委員会委員のヨリス・ラウェヤイ議員(パプア選出)は19日、記者団の前でバクリー氏批判を展開した。バクリー氏は党首に選出された2009年党大会で、地方支部に毎月500万〜1500万ルピア(約4万5千〜13万5千円)を支援すると約束したが、「助成金は中断したままだ。いままで約束にそぐわない形で止まっている」と語った。
同議員は6月下旬にバリで総選挙の選対を組織した際、州・県支部に9カ月分の助成金のうち4〜5カ月分しか支払われなかったことを例に挙げ、「これは党財務の危機だろう」とバクリー氏を攻撃。10月の代表者会議での、バクリー党首の党大統領候補の見直しを「(党内の)静かな多数派の意見」として要求した。
ヨリス議員の背後にはアクバル・タンジュン最高顧問会議議長がいるとみられる。同議員の発言の3日前、アクバル氏は「党内でバクリー体制を再検討する」と語った。党内助成金問題に加え、バクリー氏が率いるバクリーグループが引き起こしたシドアルジョ熱泥噴出事故が、党支持率の停滞につながっていると批判した。
各世論調査でバクリー氏の支持率は、ジョコウィ・ジャカルタ特別州知事、プラボウォ・スビアント氏に比べ伸びを欠く。党ではほかに有力候補がいないため、不人気な党の候補でなく、党外の有力候補を担ぎ、次期政権への影響力を確保しようとする考えが透けて見える。自党の大統領候補に拘らなければ他党との連合でも選択肢が増える。
スハルト政権の1980年代から閣僚を歴任したアクバル氏は98年7月に党首に就任し、前身が翼賛政党として批判を浴びた同党を再建。04年総選挙で党を国会第一党に導き、権勢を誇った。09年党首選でバクリー氏を支援した後に最高顧問に就任していたが、12年7月のバクリー氏の大統領候補宣言以降も候補変更の可能性に言及していた。
代表者会議は地方支部と中央執行部の役員が集まる党内意思決定機関。総選挙を控え、バクリー氏とペアを組む副大統領候補を議論する見通しだったが、アクバル氏周辺が「バクリー更迭シナリオ」の雰囲気を醸成した格好だ。
バクリー氏側はこれに反発。党総選挙対策委員会のルリー・ハイルル・アンワル氏は「自立できている地方支部もある。苦情を言っているのは中央から以外に収入や資源のないところだ」と反論した。代表者会議でバクリー氏の大統領候補撤回は議題に上がらないと強調。「総選挙当日、政党が各投票所に独自に用意する監視員の手配だけでも1200億ルピアかかる」と内幕を明かし、執行部に依存する地方支部を非難した。
バクリー氏一族が率いるバクリーグループは、今年上半期には経営状態を不安視する報道も出ており、英石炭開発ブミの保有株式を2億2千万ドル(推定)で売却する方向で調整。グループ傘下の企業売却も進めている。
04年党首選でアクバル氏を破り、09年党首選でもスルヤ・パロ現新党国民民主党党首を支援してアクバル氏と争った派閥領袖のユスフ・カラ前副大統領は20日、「党内の問題」と談話を出さなかった。(吉田拓史)