貿易赤字脱却遠く 世界経済の低迷で 商品価格が下落原油輸入は増加
1日発表の貿易統計によるとインドネシアは今年上半期で2012年の2倍近くとなる33億1千万ドルの貿易赤字を積み上げた。通貨安を招く主因になっている赤字構造からの脱却は遠い。
「世界経済は改善を見せていない。主要貿易相手国で、経済規模が大きい中国や日本(への輸出)が鈍化している」。ギタ・ウィルヤワン商業相は2日、当分は赤字基調が続くとの見通しを示した。
資源国のインドネシアは、資源開発が進んだ1970年代以降、貿易黒字が続き、2000年代に入ってからも資源価格の上昇を追い風に黒字を維持してきたが、昨年に初めて通年で赤字を記録。今年も3月を除き全ての月が赤字でルピア下落の主因になっている。
赤字になるのは世界経済の減速で輸出商品価格が下落する一方、好調な国内消費が輸入を増加させているためだ。
主要な輸出商品である石炭、パーム油、ゴム、ニッケルの今年上半期の輸出総量は前年同期比で17.8%増えたが、輸出額では2.8%減少した。世界最大の輸出量の石炭、1位のパーム油ともに25%ほど価格下落していることが痛手になっている。
ギタ商業相は「輸出総量はかなり増加しているが輸出の大部分を占める商品価格がさらに下落する可能性もあり、輸出額増加には寄与しない」と悲観的な見方を示す。
上半期の輸入総額は、資本財などの減少で前年同期比マイナスだったが、エネルギーの需要増で原油の輸入額は24.75%増加しており赤字を押し上げている。赤字でルピア安が進めばインフレ率が上がり、これまでの経済の牽引役だった個人消費の減速につながる。
楽観的な見通しもある。インドネシア科学院(LIPI)エコノミストのラティフ・アダム氏は「ルピア安が競争力を高め、輸出を後押しする」と述べ、下半期には米国や日本の景気が回復に向かいインドネシアの成長を支えるとの見方を示した。
産業の付加価値を上げ、赤字解消にもつなげようと政府は未加工鉱石の輸出禁止を決めているほか、ギタ商業相は新たな市場として南米や中東、アフリカへの自動車や自動車部品の輸出を奨励していくとしている。(堀之内健史)