獄中から汚職告発 12件の物証提出 元民主党幹部ナザルディン被告
元民主党会計局長ムハンマド・ナザルディン被告(汚職罪で禁錮7年、再審請求中)はこのほど、複数の政府高官や国会議員らが関与した大型汚職事件12件の物証を汚職撲滅委員会(KPK)に提出したと明らかにした。ユドヨノ大統領の与党・民主党の同僚の汚職関与を次々と暴露し、党の支持率低下を引き起こした同被告は、現在も獄中から多様なビジネスを展開しているとされ、元同僚らに不正暴露の脅迫を突き付けながら、利益を得るもくろみとの批判も出ている。
ナザルディン被告は先月31日、KPKの汚職捜査に全面的に協力していきたいとの意向を表明し、計12件の大型汚職事件に関する物証を提出、レバラン(断食月明け大祭)後、事件の詳細について証言していくとの姿勢を示した。
KPKのこれまでの調べでは、被告は横領したSEAゲーム(東南アジア選手権大会)選手宿舎建設資金で、自身が経営するプルマイ・グループ傘下の子会社5社を通じ、国営ガルーダ航空の株(3008億ルピア相当)を購入したことが発覚。KPKは先月、同被告を資金洗浄の疑いでも容疑者に断定した。
被告は取り調べに対し、株購入は民主党中央執行委員会幹部に命じられたとし、資金はハンバラン競技場建設にも充てたと供述している。
また国家警察交通局の運転教習機材調達汚職事件で、被告所有の企業2社が同事業を落札したことも判明した。国会が6千億ルピアに上る警察予算を審議した際、ジョコ・スシロ元交通局長(収賄罪で公判中)と接触した国会議員は複数いるとして、ゴルカル党や闘争民主党、民主党の議員を挙げている。
■発電所事業にも照準
さらに被告は電子住民登録証(eKTP)事業の予算にも照準を合わせている。同事業には「(ゴルカル党の古参党員)スティヤ・ノファント国会会派代表や国会第2委員会の委員数人のほか、私や(元民主党党首)アナス・ウルバニングルム氏らも関与した」と名指ししている。
被告は「ラマダン(断食月)中でもあり、私は国民に対し、私が知っているすべてのことを明らかにすると約束する。(事実に)付け足したり、減らしたりしたくない」とありのままに話していく意向を強調した。
被告は他にも汚職疑惑として、バンテン州タンゲランの航空大学練習機調達、国営ムルパティ航空の航空機調達、税務総局庁舎建設、憲法裁判所建設、東カリマンタン州の石炭火力発電所、リアウ州の石炭火力発電所、中部ジャワ州チラチャップの石油精製所などの各事業を挙げている。
被告は現在、主に汚職犯を収容する西ジャワ州バンドンのスカミスキン刑務所に収監されている。容疑者断定後、身柄を拘束されずに半年以上が経過しているアナス元党首やアンディ・マラランゲン前青年スポーツ担当国務相ら民主党幹部の事件のほか、「現職の政府高官を含む関与者の告発を続けていく」としている。(配島克彦)