「上限を20%に」 工業相提案で規定検討 来年の賃上げ
政府は来年の賃上げ率について、上限を20%とする規定を検討している。今年はジャカルタや西ジャワの一部で40%を超えるなど、急激な賃金上昇が企業経営を圧迫するとして経営者から苦情が上がっていたが、労働組合側は反発。経営側も労働集約産業はより低率とすることを望んでおり、今後の調整は難航が予想される。
ヒダヤット工業相はこのほど、経済担当調整相事務所で実業家を招いて開かれた会合後、地元紙に「賃上げを最高でも20%とする特別な政策を取る」との意向を表明。「全国規模での賃上げの指標が必要だ。政令を通じて規定するよう提案している」と話した。
インドネシア商工会議所(カディン)前会頭で実業界出身のヒダヤット氏は、通貨安やインフレ率上昇など景気の不透明感が高まっていることに触れた上で、「工業の成長の勢いを維持したいと思っている」と述べ、工業による経済の底上げが国民全体の福祉向上につながることを強調した。
労組側は来年の賃上げ率について、補助金燃料値上げによる物価上昇を見込み、今年から50%増を要求するとの方針を示し、経営者側から反発の声が上がっていた。
ムハイミン・イスカンダル労働移住相は、50%の賃上げ要求について、「そのような要求は(40%以上となった昨年の)1回のみ。来年はそこまで高くならないだろう」との指針を示し、上限規制を固めた上で労使との協議に挑む姿勢を見せた。
インドネシア経営者協会(アピンド)のソフヤン・ワナンディ会長は、20%の上限案に原則賛成の意向を表明しながらも、「労働集約型産業は別にすべき」と主張。また、労働争議が先鋭化していることについて、「労働問題が安定化するよう、政府の指導を願っている。ましてや来年は(大統領選があるなど)政治の年で、問題がより過熱する恐れがある。経済も困難な状況になりつつある中、われわれは労働省や労働者も含め、一致団結する必要がある」として、円滑な交渉を呼び掛けた。
一方、金属労連(FSPMI)のイクバル・サイド会長は「工業相に賃金を決める権限はなく、越権行為だ」と批判。50%賃上げの要求は「まだ交渉の余地がある」とし、経営側との協議の席に着く姿勢を見せている。
勤続1年未満の従業員が対象となるインドネシアの最低賃金は、毎年1月1日に改定。前年9月ごろから、州ごとに政労使で3者協議を行い、そこで出た提案を州知事が承認する形を取ってきた。だが、近年、労組側が議場の周りを取り囲んで圧力を掛け、自治体首長が選挙での票を見込んで労働者側の意見に傾くケースが増えている。不満を持った経営者側が退席した状態で決定されることもあるなど、3者協議の枠組みの有効性を疑問視する意見が出ていた。