日系製鉄、現産加速 自動車用亜鉛めっき鋼鈑

 自動車市場の拡大が続くインドネシアで、自動車用亜鉛めっき鋼鈑の現地調達化に向けた動きが本格化している。昨年12月に新日鉄住金が合弁会社設立の方針を明らかにしたことに加え、JFEスチールは17日、加工工場の建設を発表した。現調率を高めながら現地生産を拡大する日系自動車メーカーからは歓迎される一方、日本から輸入する原板の冷延鋼板では、アンチダンピング(AD)規制によるコスト増が依然、課題となっている。 
 JFEスチールは、西ジャワ州ブカシ県のMM2100工業団地内に約300億円を単独出資し、「JFEスチール・ガルバナイジング・インドネシア」を設立。年産能力は40万トンで、16年3月の稼働を目指す。
 新日鉄住金は、国営製鉄クラカタウ・スチールとの間で、溶融亜鉛めっき鋼板の製造を見込んで合弁会社設立に合意し、昨年12月、今年前半に正式契約を目指すことを発表した。
 新日鉄住金とJFEスチールによる自動車用亜鉛めっき鋼板加工分野の進出は、最終製品の形で輸出していた亜鉛めっき鋼板の現地生産化で、輸送コストの削減や細やかなユーザー対応などにつなげるのが狙い。自動車メーカーの現地調達要求に対応した形だ。
 高級亜鉛めっき鋼板は、さびにくい特徴などから自動車の外装鋼板などに使用される。インドネシアでは自動車市場の成長で品質要求が高まる中、中長期的に使用比率が上昇するとの予測が強い。

■規制で5%のコスト増
 一方、日系大手製鉄メーカーにとって、コスト増になると懸念されるのが、インドネシア政府が発動した溶融亜鉛めっき鋼板の原板の冷延鋼板のAD規制だ。
 クラカタウが11年6月、商業省のアンチダンピング委員会(KADI)に輸入鉄鋼製品のダンピング被害が発生していると提訴。政府は今年3月、3年間の日本製冷延鋼板への賦課を決定した。
 規制により「大体3〜5%ほどのコスト増となった」(日系自動車メーカー幹部)と不満が出るなど、日本製冷延鋼板の大口ユーザーである自動車メーカーに影響が出ており、JFEスチールなど日本の製鉄メーカーは規制の再考をインドネシア政府に求めている。
 日系自動車メーカーは、品質の観点から、日本の製鉄メーカーの鋼板を7〜8割使用。残りは韓国製が多く、クラカタウの占める割合は5%以下にとどまっているのが現状で、地場材をメーンで使用することは当面難しい。メーカー各社はAD規制やルピア安といったコスト増への対応が課題となっている。
 新日鉄住金とクラカタウの合弁会社設立でも、AD規制で日本からの輸入に障壁を設けることで、技術移転を促したいインドネシア政府の思惑があるとの見方も出ている。(赤井俊文)

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