現金給付、粛々と 大きな混乱なく 燃料値上げの貧困層補償策

 22日に実施された補助金付き燃料の値上げに合わせ、政府は同日、補償策の一つである貧困世帯への直接現金給付(BLSM)を開始した。給付対象世帯の選定などの課題はありながらも、主要都市から段階的に実施していることもあってか、24日まで給付手続きで大きな混乱は伝えられておらず、これまでのところ滑り出しは順調なようだ。
 約2万3千世帯への現金給付を請け負う中央ジャカルタの中央郵便局では初日の22日、2400人以上の申請を受け、受付時間を1時間延長した。市民が殺到する事態を避けようと、管轄地区ごとに日程を定めているが、初日にはテレビなどで知った別の日の地区の住民なども駆け付け、郵便局の周りに人だかりができたという。
 一方24日、国営郵便会社・ポス・インドネシアのクトゥット・マルジャナ社長が視察した午後3時半ごろには受給者はこの日の手続きをほぼ終えており、駐車場に設けられた専用窓口は閑散としていた。
 給付は22日にまず全国14の主要都市から開始。段階的に全国に広げていく。配布を進めている社会保険カード(KPS)と一緒に住民登録証(KTP)か家族カード(KK)を提示することで、給付を請け負っている郵便局で、月15万ルピアの支給を受けることができる。今回の支給額は2カ月分の30万ルピア。合計4カ月分を受け取る予定だ。
 ブディオノ副大統領は24日、東ジャワ州マランの郵便局で給付手続きを視察。「政府は現在、より住民に近いところに専用窓口を設ける準備を進めており、今後は郵便局まで足を運ぶ必要がなくなる」と述べ、庶民の利便性向上に努めていることを強調した。
 英字紙ジャカルタ・ポストは、給付の理由を知らずに現金を手にして受給者が喜ぶ様子や、物価上昇の補償としては金額があまりに低いなどと訴える受給者の声を伝えている。
 現金給付の受給対象者は1550万世帯。2011年に中央統計局が実施した社会保護プログラム統計が元になっている。予算は9.3兆ルピア(約920億円)と規模が大きく、法案に賛成した政党の選挙資金に流用される恐れがあるとの指摘が上がるほか、現金の直接給付は貧困抑制効果が薄いばかりか、人々の勤務意欲にも悪影響を与えると批判されていた。
 燃料値上げ後に予想される物価上昇の打撃を受ける貧困層への補償政策として、政府は直接現金給付のほか、コメ助成「ラスキン」や貧困児童奨学金などのプログラムの拡充を予定。これまでの燃料補助金は、自動車を保有する中間層以上の所得層が恩恵を受けていたため、補助金本来の目的である低所得者層向けに適切に分配されていることをアピールしていく方針だ。(田村隼哉)

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