「中国以上の経済圏に」共同体間近のASEAN期待 Fリテの柳井会長
ユニクロのインドネシア第1号店開店発表のため、ジャカルタを訪れたファーストリテイリングの柳井正・会長(兼社長)は20日、邦人記者団との共同会見に応じ、2015年に予定される東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体について、「共同体になれば、中国に匹敵するか、それ以上の経済圏になる可能性がある」と述べ、ASEAN市場の今後の成長性に期待を示した。
「90年、2000年代、そして今も中国の上海が注目を集めているが、今からはジャカルタが飛躍するのではないか」「環太平洋が世界の中心になって、その中の中心になるのがインドネシア」と評価した柳井会長。
東南アジアでは、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンに続く5カ国目の出店について、「たまたま順序が遅くなっただけでいつでも出店できた」と説明。事業拡大のスピードについて、「消費者に評価されないとなかなか出店に結びつかないことや立地の問題もある。われわれはベストの場所に出したいが、なかなかそういう立地がないし、ショッピングセンターが主になるので、オーナーが『ぜひ誘致したい』と思わなければできない」「まだ1店舗も出していない。他の国でもそうだが、1店目が成功したら、呼ばれるようになる。店を作るのは簡単だが、人を育てないと店が運営できない」として、具体的な数値目標は「早いうちに10店舗」とするにとどまった。
熱帯の国の進出では、シンガポールで防寒着のウルトラライトダウンが売れ筋になったことを上げ、「冷房が効いているところでは1枚では過ごせないし、暑いところにも出なければならないので、色々なシーズンの商品が売れるのではないかと思う。出店するまでは、暑い地域はTシャツとショートパンツで十分なのではと思ったが、冬物も売れる」「われわれが思っていないようなものが売れる可能性がある」と述べ、市場の特性を見極めながら事業展開を進めていく方針を表明。また、生産国でもあるインドネシアの文化を取り込んだ商品開発の可能性について、「例えばバティックのようなものを、インドネシアや欧米のデザイナーが新しく解釈して作るなど、いろいろな可能性があるし、そういうことをやってみたいと思う。ただ、インドネシアだけでなく世界中で売るということだ」と話した。
グローバル企業を目指し、世界的に同一水準の賃金体系を導入する方針を示したことについて、「同一賃金とは言っておらず同一水準。転勤してもらおうと思ったら、生活水準を同じにする必要がある。賃金を下げるということは一切考えていない。むしろ賃金を上げようと思っている」と強調した。日本で環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる議論が盛り上がる中、「競争しながら共存していくことが必要。競争がないと生活水準は上がらない。閉じていたら成長は止まると思う」「グローバルに出て行くということはビジネスチャンスが広がるということ。個人でも今まで一つの国で生きてきた人が世界中で自分の仕事ができるというチャンスになると思うべきだ。お客様に要望されて喜ばれたら売れるし、喜ばれなかったら売れないというのは世界共通」と持論を展開した。(上野太郎、写真も)