「洪水防ごう」水管理セミナー JICAと経済調整相事務所 ジャカルタと西ジャワ両州協力へ
経済担当調整相事務所と国際協力機構(JICA)は30日、首都圏で多発する洪水被害の軽減、雨水の貯留・利用の方法を共有するセミナーを開いた。ジャカルタでは急速に進む都市化で河川への雨水の流入増、地域の貯留機能の低下、地下水のくみ上げによる地盤沈下が洪水の原因となっており、日本が過去に経験した地盤沈下対策などを共有することで、具体的な解決につなげたい考えだ。
セミナーの冒頭では、自治体の貯留池の建設や住民への意識啓蒙を促進するため、ジャカルタ特別州のジョコウィ州知事と西ジャワ州のペリー・スパルマン知事代理が出席し、ジョコ・キルマント公共事業相の立ち会いで、両州政府が協力する洪水対策、水管理運用推進の覚書に署名した。ジョコウィ知事は洪水対策のために首都圏に浸透井戸1万カ所の設置を目指しており、今回の覚書でジャカルタ特別州は西ジャワ州を支援し、各所に井戸の設置を急ぐ。
ジャカルタの地下水は都市化により、農業用水だけでなく工業用水としても多く使われるようになり利用量が増加。地盤沈下の原因となっている。東南アジアの水利用を研究する総合地球環境学研究所の谷口真人教授によると、タイなど東南アジアのほかの国でも地盤沈下の問題は発生していた。タイでは1970年代から工業用水の過剰なくみ上げで地盤沈下が発生していたが、地下水に課金することで、市民が上水を利用するようになったという。
ジャカルタでもすでに課金は始まっているが、値段が高すぎるために市民が正確に報告せず、仕組みが定着していない。ジョコ公共事業相も構造物の建設だけでなく、住民の意識改善が必要だと訴えた。
一方、会場からは政府はセミナーを頻繁に開くだけで、具体的な行動が伴っていないなどと、不満の声も聞かれた。(高橋佳久、写真も)