パプアに最高警戒令 武装派が山岳部襲撃 銃撃続発で警察増派
フリーポート社労組紛争と独立運動に絡み、武装組織と治安部隊の銃撃戦が発生するなどして死傷者が続出し、パプア州の治安が急速に悪化している。国家警察は二十五日、国境付近の山岳地帯プンチャック・ジャヤ県に最高度の警戒令「シアガ1」を発令、機動隊増派を決定し、武装組織の掃討作戦に乗り出した。
パプア州プンチャック・ジャヤ県のムリア空港で二十四日、ムリア警察署署長が射殺された事件以降、同県の治安は急速に悪化した。
国営アンタラ通信によると、事件から一夜明けた二十五日、同州プンチャック・ジャヤ県ムリアのウォンデン・ゴバック村にある同県食料局事務所が、武装集団によって放火された。さらに武装集団は警察機動隊の詰め所を二回にわたり襲撃、銃撃戦が発生した。二十六日現在、同地区は閑散としているという。
これを受け、国家警察は同県に「シアガ1」を発令。一連の事件を独立派武装組織の犯行とみて、パプア各県に機動隊二百八十人の増派、特別捜査チーム三組の派遣を決定した。
武装組織は機動隊らが入れないジャングルに拠点を置いており、「(県内を)約三十人構成の小さなグループが数組、動き回っている」(アントン・バフルル・アラム国家警察報道局長)という。
アグス・スハルトノ国軍司令官は、警察とともにパプアの武装組織を追跡していると説明。しかし、あくまで警察支援の範囲内であることを強調し、警察機動隊とは異なり、軍は増派しないとの方針を表明。パプア情勢については「武装集団は住民の中に紛れ込んでおり、摘発することは容易ではない」と述べた。
■国家人権委が調査
分離独立派の動きが活発化し、鎮圧に向け、治安部隊による強硬手段を懸念した国家人権委員会の調査班は二十五日、パプア州都ジャヤプラ入りし、十九日に起きた治安部隊による独立派集会介入事件の現地調査を開始した。
同委のリドハ・サレ副委員長は「アベプラ(で起こった集会介入事件)では、人権侵害を示す要素が多分にある」と治安部隊による権限乱用を示唆。
事件では治安部隊が独立派の集会に介入。人権委によると、六人が死亡し、十七人が行方不明になった。うち二人の死体は国軍駐屯地裏で発見されたため、軍の関与も指摘されている。
■鉱山周辺で銃撃続発
今月十日以降、八人の死者が伝えられている米鉱山会社フリーポート労使紛争では、鉱山付近の治安が悪化している。
パプア州警によると、二十六日未明、同州ティミカ県のフリーポート社クアラクンチャナ事務所から三キロの道路で、警察官三人と警備員二人が運転中に数発の銃撃を受けた。また同日、フリーポート社敷地内のトゥンガバプラ鉱山から三十五キロの地点で武装集団による機動隊車両への発砲事件が発生した。さらに労働者数千人は二十六日まで、鉱山から港湾への幹線道路を重機で封鎖、鉱山の操業が一部停止している。
一連の動きを受け、フリーポート社は鉱物の売買契約先数社に対し、フォースマジュール(不可効力)を宣言し、売約が履行できない旨を伝えたと発表。
ラマダニ・シライト広報は「ストが生産や輸送に大きな打撃を与えている。販売契約をきちんと達成する能力がなくなってしまった」と操業に多大な影響が出ていることを明らかにした。
米国国務次官補(東アジア・太平洋担当)のカート・キャンベル氏は二十五日、ジャカルタで記者会見を行い、「パプアでこの数週間のうちに起こった事件には、公正で徹底的な調査を行ってもらいたい」とインドネシア政府に全容解明を促した。