落盤事故の死者28人に 近年最悪 パプアのフリーポート

 米系鉱山開発フリーポート・インドネシアは22日、パプア州ミミカのビッグ・ゴッサン鉱山で14日に発生した落盤事故で、生き埋めになった作業員38人のうち10人を救出、28人の死亡を確認したと発表した。近年、インドネシア国内で起きた最悪の鉱山事故に、インドネシア政府は独自に事故調査を実施する方針を表明し、フリーポート側の安全対策の不備を追及する構えを示している。

 事故が発生したのは、世界最大級の鉱山グラスバーグから2.7キロメートルのビッグ・ゴッサン鉱山。地下に掘られた長さ250メートルのトンネルの一部で落盤し、訓練施設にいた作業員38人が生き埋めになった。
 フリーポートや軍警察などが救助隊を編成し、掘削の専門家らも参加。落盤現場へ通じる2本の道を掘り、岩石を撤去する重機を搬入した。事故発生3日後の時点で10人の生存を確認。段階的に全員救出したが、生き埋めになった作業員の捜索は難航し、残り28人の死亡を確認するまで1週間かかった。
 22日、フリーポート・インドネシアのロジック・ストジプト社長やフリーポート・マクモラン・カッパー・ゴールドのリチャード・アドカーソン最高経営責任者(CEO)、パプア州のルカス・エネンビ知事は、中央ジャカルタ・スナヤンの国会を訪問した。19日に国会代表団として、事故現場を視察したプリヨ・ブディ・サントソ国会副議長(ゴルカル党)に対し、事故の経緯について説明した。
 プリヨ副議長は「調査結果を待ちたいが、フリーポート側に事故を引き起こした過失が認められた場合は、法的に責任を負ってほしい」と強調した。
 ユドヨノ大統領は20日、フリーポートの鉱山で事故が続発しているとの認識を表明。原因を究明する調査班を派遣するとの方針を示した。事故発生後、大統領はジェロ・ワチック・エネルギー鉱物資源相とムハイミン・イスカンダル労働移住相を同鉱山へ派遣する予定だったが、フリーポート側が救出作業に専念するとして拒否したことに苦言を呈した。これについて、国会議員らも「フリーポートの横柄な態度」と非難していた。
 フリーポートは犠牲者の遺族に追悼の意を表明。賠償金については犠牲者の子どもが大学を卒業するまでの学費を支援すると説明し、最高20億ルピア(約1900万円)ほどになるとした。事故調査委員会を設置し、原因を究明する方針。
 フリーポートは現在、2万4100人のインドネシア人従業員を抱える。うち正規社員は1万1700人で、地元のパプア人は34.63%、ジャワなど他の地方出身者は64.04%を占める。契約社員は1万2400人。マネジャークラスに36人、役員に5人など地元住民を優先的に採用し、地元に配慮する姿勢をアピールしている。(配島克彦)
■フリーポート・インドネシア
 米アリゾナ州に本社を置く世界最大級の銅・金生産量を誇る鉱山会社の子会社。クーデター未遂事件後の1967年、政権を奪取したスハルト元大統領から認可を受け、73年からパプア州グラスバーグ鉱山で生産開始。2012年度売上は約3兆円。銅産出量は世界2位で11%を日本に輸出。鉱山開発をめぐり、利益還元に不満を持つ住民の抗議デモや待遇改善を訴える労組のストが続発。軍警察に年1400万ドルの警備費(10年)を支払っているが、武装組織の襲撃事件も絶えない。

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