国内外で波紋広がる 「宗教少数派に非寛容」批判も 米団体のユドヨノ表彰
宗教的自由・寛容性と人権の尊重を促進したとして、米国の非政府組織(NGO)「アピール・オブ・コンシャンス財団(ACF)」が、ユドヨノ大統領の表彰を今月末に予定していることに対し、国内外で波紋が広がっている。2004年に初の大統領直接選挙で選出されたユドヨノ氏は、国内治安の回復やアチェ和平などで一定の業績を上げた反面、近年は国内各地で少数派の襲撃や宗教・民族差別が顕在化してきたことで、表彰に疑問を投げかける声も噴出。図らずも寛容性という側面から見たユドヨノ氏の評価を論じる契機になっている。
ユドヨノ氏は、スルヤダルマ・アリ宗教相など、宗教少数派への寛容性に欠けるとされる人物を閣僚に任命し、少数派の権利について関心がないとして国内の人権団体の批判を受けている。
6日にはキリスト教徒やイスラム異端派とされるアフマディヤなど宗教少数派の50人が、中央ジャカルタの米大使館前で抗議。カトリック司祭で哲学者のフランス・マグニス・スセノ氏はACFへ充てた公開書簡で、「ユドヨノ大統領は宗教少数派を擁護するために何の発言も行動もなかった」とし、国内での懸念を無視する形で表彰を決めたACFを批判した。
オンライン上でも批判が広がり、ウェブサイト「Change.org」では、複数のグループが表彰に反対する署名を募っている。イスラム社会団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)のキアイ(イスラム指導者)を父に持つイマム・ショフワンスセノ氏のグループは22日午後の時点ですでに5千以上の署名を集めた。ACFのフェイスブックページでも、表彰の再考を求める書き込みが目立っている。
ACFは、団体の設立趣旨に沿って、寛容性と人権の尊重を促進した世界の指導者を毎年表彰しており、これまでにドイツのアンジェラ・メルケル首相などを選出した。ACFがユドヨノ氏の表彰を決めた背景や、表彰を見直すかは明らかになっていない。
ジェレミー・メンチックボストン大教授は、同大統領の任期中、インドネシアで宗教的な非寛容さを指摘する報道が国際メディアでも頻繁にあり、今回の表彰は問題を覆い隠してしまう可能性があると懸念を示した。
ディポ・アラム内閣官房長官は21日、宗教少数派への差別はすでに長期にわたって起きている問題として、スセノ氏は少数派の現状を正しく理解していないと反論。ユスフ・カラ前副大統領やディノ・パティ・ジャラル駐米インドネシア大使は表彰について、ユドヨノ大統領だけではなく、インドネシア国民全体の功績としてとらえるべきとの見解を表明。ユドヨノ氏個人の問題ではないと主張した。