女優らに不正資金 イスラム政党に疑惑 牛肉輸入汚職事件
福祉正義党(PKS)党首や同党所属の農相らの関与が取りざたされている牛肉輸入汚職事件で、容疑者と親しい女性たちも不正資金を受領していたことが発覚し、物議を醸している。清廉なイメージで都市中間層に支持を広げたイスラム保守政党の幹部らが、現金授受だけでなく、女性問題に関与した疑いが強まっている。
女性問題の中心人物は、汚職発覚でPKS党首を辞任したルトフィ・ハサン・イスハク容疑者の秘書、アフマッド・ファタナ容疑者。2009年〜今年初頭、同容疑者の銀行口座に300億ルピア近くの入金があり、贈賄実業家から約165億ルピアを受領したとみられる。口座から女優やモデルへ多額の送金が確認されたほか、ルトフィ容疑者にも数億ルピアが渡り、PKSの車購入などにも充てられた疑いが持たれている。
事件に使われた資金や使途に関する捜査を進めている汚職撲滅委員会(KPK)は、セクシーな女優として知られるアユ・アズハリさんを事情聴取。アユさんは「地方首長選挙キャンペーンへの出演料の前金として、ファタナ氏から受け取ったが、不正資金の一部だったとは知らなかった」と述べ、受領した2千万ルピアと1800ドルをKPKへ提出した。
一方、モデルのフィタリア・スシャさんは、これまでファタナ容疑者から乗用車(2億5千万ルピア相当)やスイス製時計(7千万ルピア相当)を受け取ったと証言。「ファタナ氏からプロポーズされたことがある」と親しい関係にあることを明かしたが、資金源には関知していないとしている。
フィタリアさんは男性誌のモデルとして活躍。今年2月以降、各誌でセクシーなポーズの写真が掲載され、話題になったばかり。
さらにファタナ容疑者は、ダンドゥット歌手のトリ・クルニア・プスピタさんにも車(3億5千万ルピア相当)やブレスレット(7千万ルピア)、腕時計(千万ルピア)を贈っていたことが分かった。
今年1月、中央ジャカルタの高級ホテルで現行犯逮捕された同容疑者が、一緒にいた女子学生に千万ルピアを渡していたことが判明。捜査で、着服した金を親しい女性たちにばらまいていた事実が次々と明るみに出ており、地元メディアは女性遍歴をセンセーショナルに報道。ファタナ容疑者だけでなく、イスラム知識人として知られるPKS幹部と疑惑の女性たちの関係にも注目が集まっている。
これまでの調べによると、ルトフィ容疑者は牛肉輸入事業の受注業者から、落札手数料として400億ルピアを数回に分けて受領することで合意、13億ルピアを受け取った時点で摘発された。秘書のファタナ容疑者だけでなく、PKSの他の幹部や関係者にも資金が渡ったとみられている。
KPKは、PKS本部に保管されている高級車6台や、西ジャワ州デポックにあるファタナ容疑者保有の家(58億ルピア相当)を押収。PKS創立者の一人で、最高幹部のヒルミ・アミヌディン氏を近く参考人として事情聴取する方針を示している。