火災現場にも「季節風」 政党相次ぎ来訪、被災者支援で票集め バクリー夫人も子供服を渡す
来年の総選挙、大統領選を前にインドネシアは「政治の季節」を迎えている。火災現場の被災者にも政治は無縁ではないようだ。
西ジャカルタ・タンボラ郡クレンダン。9日の火災で第7・12隣組の家屋70戸が全焼し、約300人が住居を失った。カンプンの前の通りにはがれきの山が高さ2メートルほど積もり、二輪車の通る隙間もない。
第7隣組長のスルヤディさん(47)の自宅も全焼した。衣服も燃えたため、慈善団体が提供した衣服で生活する。焼け残った壁に赤十字のテントを張り、がれきの上で寝食しているが、雨が降ればテントの雨漏りがひどく、即席の寝床が濡れてよく眠れない。
火災以降、行政、財団から支援を受けた。州は1村に対し2千万ルピアを補助。イスラム、仏教系の財団が食糧、衣服などを支援した。
だが最も目立つ来訪者は政党だ。火災に見舞われた第12隣組のサレハさん(60)によると、民主党、ゴルカル党、国民民主党(ナスデム)、福祉正義党(PKS)などの関係者がカンプンを訪れ、金品を寄付していったという。
ゴルカル党大統領候補アブリザル・バクリー氏の妻も来たという。「これはその奥さんからもらったもの」。スルヤディさんの家には小学生向けの服が入ったビニール袋が三つあった。PKSのシールが貼られたバケツもある。
家を失った50代男性はこう言う。「政党の人間がたくさん来た。来年は総選挙だからね。彼らは支援をしに来たのではなくて票を探しに来たんだ」。「そうだ、そうだ」と周囲の住民たちもうなずいた。(吉田拓史、写真も)