政党グッズ書き入れ時へ 政治の季節到来 創業23年の専門店 中央ジャカルタ・スネン
中央ジャカルタの伝統市場パサール・スネンに政党御用達の店がある。ユニフォームなど政党関連商品を扱う「コミコ・アドバータイジング」。創業23年。来年の選挙を見据えた「政治の季節」が到来し、店にとって絶好の書き入れ時を迎える。
「1990年に店を開いた。政党は三つしかなかった」。店主ダスリアルさん(46)は生まれ故郷の西スマトラ・パダンから上京し、2、3の仕事を転々とした末に、政党関連商品の販売に行き着いた。開店当時、スハルト元大統領の独裁を支えた翼賛政党ゴルカルが圧倒的に売れていたかと思いきや「民主党(PDI)のユニフォームもゴルカルと同じくらい売れていた」という。
98年にスハルト政権が崩壊し、民主主義の黎明期のレフォルマシ(改革)時代を迎えると政党は48党まで激増した。ダスリアルさんも実のところ、すべての政党を把握していなかった。「いろいろ作ったのは覚えている」
来年の総選挙に参加するのは12政党に落ち着きそうだ。中でも注文が多いのはプラボウォ・スビアント氏を担ぐグリンドラ党、民放テレビ局を保有するスルヤ・パロ氏が設立した国民民主党(ナスデム)、そのパロ氏と袂を分かった最大テレビネットワーク総帥のハリー・タヌスディビヨ氏を新たに引き入れたハヌラ党の中堅3党。ユニフォームを買い足すのは、党員が増えている徴候だろうか。
先月30日の民主党臨時党大会では、バリ州サヌールのホテルまで出張販売に臨んだ。だがユドヨノ大統領の無投票党首就任で会期が大幅に縮められたせいで「売り上げは芳しくなかった。海も見ずに帰ってきた」と悔しがる。
店に並ぶ商品は西ジャワ州ブカシ県の家屋で製造する。党旗、政治家の顔を印刷した缶バッジ、中央・地方議員らが付ける国鳥ガルーダのバッジなど政党にまつわるものすべてを取り扱う。市場での小売りより、むしろ党大会や支部開設、選挙に伴う大量注文が主なもうけ口だ。製造を取り仕切るアフェンディさん(34)は「いまは売れ行きは低調だけど、今月22日に政党による議員候補登録が締め切られる。その後に(政党の動きが激化するため)繁盛する」とにらむ。
隣のスーツ店主スカトノさん(46)の強い勧めで、スティヨソ元ジャカルタ特別州知事が党首の正義統一党(PKPI)のユニフォームを買った。スカトノさんは陸軍ジャカルタ軍管区の元歩兵隊員で、当時司令官(94〜96年)だったスティヨソ氏の下で働いた、とうそぶいた。PKPIが先月25日に滑り込みで参加を認定されたせいか、ユニフォームは注文後にロゴを縫いつける急ごしらえだ。
最後に店主に尋ねてみた。たくさんの政党の商品を売っているが、本当の支持政党はどこかと。ダスリアルさんは「自分が支持しているのは『NKRI』(インドネシア統一共和国)』だ」と言う。統一国家であることを強調する略語。世俗、イスラム政党すべてを補ううまい答えだ。(吉田拓史、写真も)