隠し資産は10億円 ジョコ元国家警察交通局長 高級住宅や別荘など30件 KPKが相次ぎ押収 教材汚職で近く起訴
国家警察交通局の運転教習機材調達汚職事件で、独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)はこのほど、インドネシア各地でジョコ・スシロ元交通局長(52)の隠し資産を次々と押収し、国内の資産総額は千億ルピア(約9億7千万円)を超えると明らかにした。警察幹部の不正蓄財の詳細が明らかにされるのは同容疑者が初めてで、近く起訴する方針。KPKは警察中枢部の捜査を着々と進め、事業を承認した副長官や国会議員も事情聴取、汚職の巣窟と批判されてきた警察の不正の実体究明の行方に注目が集まっている。
ジョコ容疑者が2010年7月(交通警察局長在職時)にKPKへ申告した個人資産は56億ルピア(約5437万円)。今回各地で次々と発覚した隠し資産は申告額の約18倍に達した。
不動産は約30件に上り、全国各地に散在している。ジャカルタではクバヨラン・バルやタンジュン・ドゥレン、西ジャワ州デポック市には2件、中部ジャワ州ではスマランのほか、ソロ3件、ジョクジャカルタ2件、バリ島クタにも住宅と土地を保有していた。
最も規模が大きいのは、西ジャワ州スバンの丘陵地にある約90ヘクタールの別荘。チークや丁字などの木が茂り、湖畔にはシカや馬などの動物を飼育する小屋や別荘5軒がある。今回差し押さえられたこの別荘に隣接する土地は、他の警察幹部が保有していることも判明した。
■警察の癒着構造
一連の捜査から、国家警察と地方警察、幹部の親戚などとの癒着構造も明らかになりつつある。高級住宅や別荘のほか、ガソリンスタンドや水田、観光バス、車といった資産は、3人いるジョコ容疑者の夫人や親戚らの名義となっていたことが分かった。
ジョクジャカルタ郊外に保管されていた観光バス6台は、ジョコ容疑者の親戚でもある地元交通警察の警察官が管理。旅行代理店から依頼を受けたときだけ、観光客用にバスを貸し出していたとみられる。
さらにKPKは同容疑者が豪州や香港、シンガポールにも家やマンションを保有していることを突き止めたが、海外の資産に法的措置を講じることはできず、マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いで不動産購入の資金源を究明する姿勢を示している。
この汚職事件では昨年7月、KPKが国家警察交通局の家宅捜索を強行。これに激怒した警察とKPKの対立が激化し、警察幹部がKPKに乗り込む事態に発展したのを受け、ユドヨノ大統領がKPKの捜査への支持を表明して両捜査機関の調停を図った。
以来、KPKはジョコ容疑者をはじめ、事業を承認した当時の監察局長であるナナン・スカルナ副長官ら幹部の責任追及を進めている。また事業に関与した疑いがあるとして、ゴルカル党幹部の国会執務室を家宅捜索するなど政治家にも波及している。
ガジャマダ大(UGM)反汚職研究所のオチェ・マドリル代表は「機材購入事業に直接関与していなくても、資金を着服した警察幹部もいるはずだ」と指摘。捜査対象をさらに拡大し、予算の不正流用の実体究明の契機にすべきだと訴えている。