刑務所襲撃4人射殺 陸軍特殊部隊の別働隊 同僚殺人者に報復か ジョクジャカルタ
23日未明、ジョクジャカルタ特別州スレマン県のチュボンガン刑務所に十数人の武装集団が押し入り、収容されていた4人を次々と射殺し、逃走する事件が発生した。元警察官を含む4人は、高級ホテルのバーで陸軍特殊部隊(コパスス)隊員を殺害した犯行グループ。赤ベレーのエリート部隊として知られるコパススが、工作員を動員して報復したとの見方が強まっている。
地元メディアによると、事件の発端は19日、ジョクジャカルタのアディスチプト空港近くにある高級ホテル「シェラトン・ムスティカ」敷地内に併設されているバー「フゴス」で、コパスス兵士1人が元警察官らの集団とけんかになり、ボトルの破片で刺されて殺害されたこととみられる。この後、元警察官らは逮捕され、チュボンガン刑務所に拘置された。
23日午前2時過ぎ、自動小銃と拳銃で武装した集団約17人が同刑務所を急襲。入り口で警察と名乗り、コパスス隊員を殺害した4人を引き渡すよう看守に要求した。不審に思った刑務官が断ると手りゅう弾を突き付け「爆破する」と脅迫し、押し入った。殴打した刑務官に収容場所まで案内させ、4人を射殺した後、監視カメラを壊し、一連の犯行が記録された映像も持ち出して逃走した。看守とのやりとりから4人の射殺までわずか15分だった。
軍と警察の対立が絡んだ刑事事件を重大視したジョコ・スヤント政治・法務・治安担当調整相は、ティムール・プラドポ国家警察長官とアグス・スハルトノ国軍司令官に事件究明を指示。関与者を追及し、法廷で裁くべきだと言明した。
高度な軍事訓練を受けた者の犯行との見方に対し、中部ジャワを管轄する陸軍ディポヌゴロ師団のハルディオノ・サロソ司令官は「国軍の部隊ではない」と関与を否定。コパスス第2情報部のワフユ・ユニアルトト部長も「事件当時、基地外の活動はなかった。外出許可を申請した兵士もいない」と述べた。
■「別働隊」に警告
非政府組織(NGO)警察監視団(IPW)のネタ・パネ代表は24日、国軍や警察が別働隊を動員し、裏工作を展開する事件が続発していると指摘。昨年4月には、北ジャカルタで暴走族の抗争をめぐり、背後にいる国軍兵士と警察官の対立が表面化。海軍兵士が「黄色い腕章」を付けた集団を動員し、コンビニなどジャカルタ各地を襲撃する騒ぎになった。
ネタ代表は「国軍は兵士の犯行を認めようとしない。別働隊の犯罪を究明せず、放置した場合、いつかこうした集団が政府機関を標的にすることもあり得る」と警告した。
兵士が警察施設を襲撃する事件は今月7日に発生した。南スマトラ州オガン・コメリン・ウル県で国軍兵士約80人が県警本部を急襲し、警察官を刺して負傷させた。警察官が交通違反の兵士を射殺したことへの報復だったとされる。
相次ぐ軍と警察の衝突について、ユスリル・イフザ・マヘンドラ元法務人権相は「国軍と警察が合同で事件の全容を究明すべきだ。治安当局による暴力行為はすでに危機的な状況にある」との認識を表明。「国家は国民を保護する義務がある。誰もが暴力で問題を解決するようになれば法治国家ではなくなる」と懸念を示した。