「農村の価値周知を」 国際NGOオイスカ
農村開発や環境保全活動を展開する国際NGO(非政府組織)オイスカ・インターナショナル・インドネシアは15〜17日の3日間、若者を中心に農業を通じた人材育成や、ビジネス、農村の魅力を伝えるワークショップを開催した。これまでは特定の地区だけでワークショップを開催してきたが、今回は35年ぶりにインドネシア全土に参加を呼び掛けた。首都圏に限らず、インドネシア各地域で都市化が進み、働き手が都会に流れやすくなっていることを危惧し、農村部の価値を周知する取り組みを続けている。
人気タレントのディック・ドアンさんがバンテン州南タンゲラン市に持つアトリエ「カンダン・ジュラン・ドアン」。アチェやパプアなどインドネシア各地からワークショップに集まった。
最終日の17日、子どもや大人が、大きな笑い声を上げながら田畑に囲まれた広場で踊ったり、農林業に関する映像を見たりしている。西ジャワ州スカブミ県の高校生アリ・ウィラ・プリアンガさん(17)は「自然の中で遊ぶのは気持ちいい」と友人らと楽しんでいた。オイスカ・スカブミ・トレーニングセンターの代表を務めるムハマド・ハリッドさんは「遊び、学びながら農村の良さを知ってもらいたい」と意気込む。
■都市化で若者流出
ハリッドさんは「インドネシアでは急速に都市化が進み、仕事を求める若者の都市部への流出に歯止めがかからない」と農村の衰退を危惧する。ハリッドさんによると、インドネシアで農業に従事する人のほとんどは50〜60歳台かそれ以上の高齢者が増えてきているという。「若年層が多いインドネシアでは若者が農業の価値を考え、農村で働く基盤を作ることで問題は解決できる」と語る。
そのために15、16日には東ジャカルタのタマンミニで、以前はオイスカに所属し、現在は農産物のビジネスを展開するOBの講演会などを開催した。
■より多くの参加を
「農作物を販売する大きなマーケットを作りたい」。ハリッドさんは若者が農業に定着するためには都市部に負けないビジネスの基盤が必要と考える。ただ、ビジネスの方法を教えるだけでは上手くいかない。人々の間で、農業をしながら暮らしていくことの喜びや農業の必要性への認識が失われつつあるからだ。
多くの人に魅力を伝えるために始めたのが、今回のディック・ドアンさんなど、著名人にも広く協力してもらう取り組み。ハリッドさんは「昨年に新しくオイスカの代表に就任し、インドネシア農業評議会でも代表を務めるフェリー・ユリアントノさんが新しい考え方を取り入れている」と話す。ディックさんもフェリーさんの知り合いだ。
フェリーさんは「オイスカには農業を振興するための長い蓄積がある。課題はどのように伝えていくか。今後もその方法を考えながら活動していきたい」と語った。(高橋佳久、写真も)