日本発コンテンツ イ進出に向け始動 アニメやJポップ 1週間で16本上映

 日本のコンテンツ産業がインドネシア進出に向けて始動した。経済産業省が主導するコンテンツ産業強化対応支援事業として、映画興行会社のティ・ジョイ(本社・東京都)は14日、中央ジャカルタのプラザ・スナヤンの映画館「XXI」で、20日までの日程で「ジャパン・アニメ・Jポップ・ウィーク(じんぱくと)」をスタートした。上映される作品は劇場用アニメーションと音楽アーティストライブ各8本の計16本。インドネシアの商業映画館で日本映画がまとめて公開されるのは初めて。インドネシアのシネコン最大手「21シネプレックス」と提携し、日本式コンテンツ・ビジネスモデルを検証、インドネシアのコンテンツ産業との関係構築の足掛かりにしたい考えだ。

 今回上映される作品には「クレヨンしんちゃん」や「ワンピース」のように、テレビ番組やコミックを通じて人気のある作品の劇場版がある一方で、大人も楽しめる芸術性の高い「星を追う子ども」のような作品もそろえた。インドネシアでの知名度は低い「009」が完売する上映日も出るなど、うれしい誤算もあるという。
 14日にスナヤンの「XXI」で開かれた記者会見では、幼少のころから日本のアニメに親しんできたインドネシアの記者たちから質問が相次いだ。
 インドネシアであまり知られていない作品も多数含まれていることについて、ティ・ジョイ社執行役員の紀伊宗之氏は「新しい市場を作りたい。すでに人気のある作品だけ持ってきたのでは、日本のコンテンツがインドネシアに広がることにはならないのではないかと思っている」と説明。「質の高い自信作ばかりをそろえたので、映画館という場所で新しい出会いをしてほしい」と話した。今後の展開として、映画館を利用した音楽ライブの生中継などを計画しているという。
 21シネプレックス社のコーポレート・セクレタリー、キャサリン・ケン氏は「アニメ界のトレンドセッターである日本作品の上映を通じ、幅広い層の集客に結び付けられたら」と期待を寄せる。
 観光創造経済省メディア・デザイン・科学総局のアルメイン・フィルマンシャ創造経済メディア局長は「日本の経験から学ぶとともに、両国間で対話する機会を設けていく必要がある」と述べた。

■リスク肩代わり
 今回の事業では、日本の配給会社やレコード会社から上映作品を募って選定した。インドネシアで海賊版が流通している作品でも、迫力ある映像や音響を劇場で体験してもらうことで高品質の日本の正規製品の魅力をアピールする。
 日本のコンテンツを海外で展開する際の問題や障壁について、経済産業省のメディア・コンテンツ産業課の小松原繁課長補佐は「日本のコンテンツの輸出は、日本国内のコンテンツ市場(年間約10兆円)の5%程度に過ぎない」と指摘。日本国内の市場成長が止まる中、海外への展開を重要視していると説明した。
 海外進出に伴うリスクを負えないコンテンツ企業に対し、経産省が作品の翻訳、アニメ技術などに関するセミナー開催といった人的交流、共同制作の促進などを通じ、相互に利益をもたらすビジネスモデルの構築に努めていきたいと話した。
 一方、映画祭への出品を除いて、日本でインドネシア映画が商業的に上映される機会は皆無だったが、昨年にはインドネシアのアクション映画「ザ・レイド」が一般公開され、日本の日活とインドネシア側の合作「キラーズ」の制作も進むなど、両国の映画人の交流が活発化している。
 ドキュメンタリーやテレビドラマの劇場公開など斬新な興行を手掛けてきた紀伊氏は「インドネシアの作品を日本に持ってくる際、われわれもシネコンを持っているので協力できることがあると思う」と述べ、映画興行の新たな展開に意欲を示した。(配島克彦、写真も)

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