二転三転のモノレール計画 企業が主導権争い カラ氏弾き出される
ジャカルタ特別州のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)州知事が早期再開を目指す首都のモノレール計画をめぐり、企業同士の綱引きが繰り広げられている。地元紙は実業家のエドワード・スルヤジャヤ氏が率いる投資会社オルトゥス・ホールディングス社(シンガポール)が企業連合ジャカルタ・モノレール(JM)社の90%の株式を取得すると一斉に報道。先に60%の株式を保有する予定とされていた、ユスフ・カラ前副大統領率いるハジ・カラ・グループを「退けた」として対立をあおっている。
開発をめぐる騒ぎが再燃したのは、JM社のスクマワティ・シュクール社長が12日、州の公聴会でオルトゥス社が90%の株式を取得すると発言したのが発端。
今年1月、JM社経営陣は「ハジ・カラ・グループが筆頭株主になる見通し」と明らかにし、同グループが7兆ルピアを出資することで事業が再開されるとしていた。カラ氏はジョコウィ州知事の出馬をお膳立てしたとされる。同グループは南スラウェシ州マカッサル、東ジャワ州スラバヤ、西ジャワ州バンドンでもモノレール事業を検討しており、週刊誌テンポは、州知事がハジ・カラ・グループをモノレール事業者に誘導することが、当選の「見返り」になると報道。しかし、これまで名前が挙がっていなかったオルトゥス社が急きょ浮上し、ハジ・カラ・グループが弾き出される形となった。
報道を受け、カラ・グループは「正式にモノレール計画から撤退すると表明したことはない。モノレール計画の実現にこれからもコミットしていく。コンセプトや資金の面でも十分に準備ができている」との声明を発表。依然計画への関与に意欲を示しているが、一方で、「先月末にJM社と協力関係構築で合意することになっていたが、その後、連絡がなく、報道を通じ、オルトゥス社がわれわれに取って代わるらしいということを知った」と困惑している。
オルトゥス社を率いるエドワード氏は、財閥アストラ・グループ創業者の華人実業家ウィリアム・スルヤジャヤ氏(故人)の長男。スハルト政権下の1990年代初めに破綻したスンマ銀行を保有していたほか、ジャカルタ国際展示場(JiExpo)の運営管理会社を経営していた。ゴルカル党の財務担当幹部を務めた経験もある。
JM社から離脱した国営ゼネコンのアディ・カルヤ社は、国営企業連合を通じ、別路線の構想に着手。JM社は、アディ・カルヤ社がこれまでの開発で投じた1200億ルピア(約11億円)を返済することで、南ジャカルタ・クニンガンなどで建設途中になっている鉄筋コンクリート製の支柱などを譲り受ける方針。オルトゥス社はすでに3千万ドル(約28億円)をJM社に出資したという。
◇モノレール計画
スティヨソ州知事時代の2003年に渋滞解決策として浮上。州は04年5月、国内企業3社55%、シンガポールMRTなど外資45%出資の企業連合ジャカルタ・モノレール(JM)社に運営権を付与。同年着工したが、資金繰りが難航。国内企業と外資の対立もあり、とん挫した。後任のファウジ州知事が11年9月に事業凍結を宣言。しかし、昨年就任したジョコウィ州知事の下で、建設再開に向け動き出している。計画されている路線はビジネス街を回る環状線のグリーンライン(14.5キロ)。東西ジャカルタを結ぶ東西線のブルーライン(15.5キロ)の二つ。運賃は平均して9千〜1万ルピアを想定している。