ムスリムの対話の場に 若手の訪日体験を共有 国際交流基金
伝統的価値を固持しながら近代化を成し遂げた日本の経験から学んでもらうとともに、イスラムと日本を結ぶネットワークづくりとして、国際交流基金が2009年から実施してきたムスリム訪日プログラム。ジャカルタ日本文化センターは11日、同プログラムの参加者を集めて発表会を開き、訪日体験を共有した。
09年11月に訪日した国立イスラム大(UIN)の講師バンバン・スルヤディさん(42)は、明治維新に関する三谷博東大教授の講義を受け、独自の伝統を守りながら進めてきた日本の近代化について学んだ。明治神宮なども訪れ、仏教と神道を同時に受け入れる日本人には他者への寛容があると指摘した。
UIN講師のアメリア・ファウツィアさん(42)は東日本大震災があった11年11月に参加、被災地を訪れた。約300年語り継がれ、震災後も市民が参加して地域社会をつなげる「末前神楽」を鑑賞。近代化した日本に残る伝統文化の役割などについて報告した。
国際交流基金は09年〜12年、日本への理解を深めてもらうため、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイのイスラム系大学の講師や助手を日本に派遣。インドネシアからは最多の14人が訪日し、この日の報告会には4人が参加した。
日本招へいのアドバイザーを務める岩手県立大の見市建准教授は「日イの相互理解だけでなく、東南アジアのムスリムが対話する場になってほしい」と期待を寄せる。
■リーダーシップ考える
将来、社会的に発言力を持つムスリム知識人になることが期待される若い研究者たち。国際交流基金はこの日、指導者の資質や能力について考えてもらおうと、講演会「信頼、危機の中での新しいリーダーシップ」を開き、UINのコマルディン・ヒダヤット学長、副大統領補佐官を務めるデウィ・フォルトゥナ・アンワル氏が講演した。
コマルディン学長はインドネシアが近代化する一方、市民意識が低く宗教・民族への帰属意識が高まりやすいと指摘。だが、市民の宗教観が高いにもかかわらず、イスラム政党の支持率が低いことを挙げ、感情的な世論に流される政治や金権政治が有能な指導者を生み出していないのではないかと投げ掛けた。デウィ氏は、市民からの信頼が指導者に一番求められると説き、市民が自ら代表を選ぶことができる選挙に責任を持つべきと強調した。(上松亮介、写真も)