中韓から東南アジアへ 「イは有望な留学生市場」 日本留学セミナー

 日本の大学のグローバル化を推進する文部科学省の「国際化拠点整備事業(G30)」の一環で、日本留学セミナーが26日、中央ジャカルタのアトマジャヤ大学で、27日には西ジャワ州バンドンのバンドン工科大学(ITB)で開かれた。16大学、在インドネシア大使館、日本学生支援機構(JASSO)がブースを出展し、2日間で高校生・大学生約2500人が会場に詰め掛けた。日本の各大学留学生の大半を占める中国、韓国の留学生が減少する中、インドネシアをはじめとする東南アジア諸国からの留学生を獲得しようと、参加校は説明会や模擬講義、面談を通じ、英語での学位取得やムスリムに配慮した受け入れ体制の充実ぶりなどをアピールした。

■「ノーベル賞」に拍手
 各大学は説明会で教育内容や入学試験などについて説明した。京都大学のプレゼンテーションには人だかりができた。新江利彦・同大ハノイ事務所所長は、同大には国別で4番目となる51人のインドネシア人留学生がいることを強調。工学部に英語コースを開設するなど受け入れ体制を強化していることを紹介し、「京大は自由な研究環境が魅力で、ノーベル賞受賞者も多数輩出している」と話すと拍手が沸き起こった。
 ブースでは英語やインドネシア語の冊子を用意し、生活やカリキュラムについて個別に参加者の相談に応じた。職員6人以上を派遣した大学は3校に上り、広島大学教育・国際室の是國裕光さんは「インドネシアを重要拠点国と位置付けている」と強調した。
 大使館や参加大学らは説明会の開催前に、首都圏の高校や日本語学科が設置されている大学などを訪れ、参加者を募ったという。
■英語で外国人が説明
 模擬講義を行った九州大学のハザリカ・へマンダ教授は、日本人ではなく、外国人教授が説明することで英語の授業が行われていることを実感してもらえたと思うと話す。
 東北大、広島大、立命館大などは留学経験者を招き、日本での生活や入学手続きについて説明。立命館大に留学しているアグス・トゥリハルトノさん(40)は「経験者が伝える最新の日本留学事情は役に立つはず。参加者も気軽に相談できる」と話した。
■理系英語コース重視
 2009年からG30が実施されて以来、拠点大学は英語で単位が履修できるカリキュラムを増加させてきた。東大は13年までに学士、修士、博士レベルで計約30の英語コースを開設。外国人の特任教員を採用するなど、これまで日本留学の障壁となっていた日本語の能力を問わずに留学生を受け入れる環境を整備してきた。
 日本の最先端の技術を学びたいという声は依然として多い。筑波大学の秋山和男国際部長は「工学系や医学系の英語コースを充実させている。英語だけで学べることをもっと伝えていきたい」と強調する。
 一方で、日本のサブカルチャー人気を反映し、文系コースにも注目が集まっている。名古屋大は経済、法学、言語文化、国際開発など文系に5つの英語コースを設置したが、同大を志望するスティアルシ・ヘスティさん(21)は「文系は理系に比べてまだ少ない。もっと選択肢を増やしてほしい」と語った。
■多様な学生を確保
 日本で学ぶ留学生総数は11年度5月1日時点で、13万8075人。上位2カ国の中国8万7533人、韓国の1万7640人で全体の75%を占める。参加校の大半の留学生出身国は中国と韓国だが、領土問題や少子化などで両国の留学生数は減少傾向にある。そこで各大学は中韓から東南アジアにシフトして留学生を確保したい考えだ。
 同志社大学国際連携推進機構・国際教育インスティテュート事務室の釆野正明事務長は、日本の大学への進学志望者の受け皿となっている日本語学校の中国人学生が激減しており、大学への影響が今後深刻化すると懸念する。
 東南アジア諸国の中でもインドネシアはイスラム諸国の学生誘致の布石にもなる。同大ではキャンパス内にハラルフード(イスラムの教義に沿った食べ物)や礼拝室を用意するなど、ムスリム学生の受け入れ体制を整えていると強調した。
 立命館大留学生課の河野真子さんは「東南アジア諸国の学生を呼び込んで出身国のバランスを取っていきたい。多様な学生を集めて多文化の環境を作ることが、留学生だけでなく、日本の学生への刺激にもなる」と力を込めた。(小塩航大、写真も)

◇参加大学
 東北、筑波、東京、名古屋、京都、大阪、九州、慶應義塾、上智、明治、早稲田、同志社、立命館の拠点大学13校と、インドネシアに事務所を設置している千葉、豊橋技術科学、広島の計16大学。

◇国際化拠点整備事業(G30)
 2008年に福田康夫元首相が提唱した、20年までの達成を目指す「留学生30万人計画」に基づいて14年まで実施。「拠点大学」に選定された13大学で、海外の学生が日本に留学しやすい環境を提供することを目指し、英語による授業のみで学位が取得できるコースの大幅な増設などに取り組む。

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