冠水続く華人地区 ゴムボートの備えも 北ジャカルタ・プルイット

 ジャカルタ中心部の治水機能を一手に引き受ける貯水池を抱え、排水設備の問題で深刻な冠水となった北ジャカルタ・プルイットは、発生から5日経った22日も完全には水が引かず2500人が避難生活を送る。華人が住民の大半を占める同地域の様子を探ってみた。
 21日午後。被災地域の詰め所になったモール「プルイット・ジャンクション」では、台湾に本部を置く仏教慈善団体「台湾佛教慈済基金会」が支援活動をしていた。日本分会は東日本大震災を支援したという。ボランティアがきびきびと働き、被災者の住所を確かめてから物資を支給するなど支援慣れしている様子だ。
 富裕層を狙った商売も登場した。冠水した100メートルの道路では、濡れずに行けるリヤカーは5万ルピア、ベチャ(三輪人力車)なら10万ルピアと普段の10倍前後になるであろう料金をふっかける。ほとんどの人は歩くことを選んでいた。
 同モールの北西に位置するプルイット・サクティ・ラヤ通り付近の高級住宅地は約1メートル冠水していると聞いた。水の中に入っていくと「20万ルピアでどうだ」と声をかけられた。いかだで濡れずに住宅地に入れるという。さすがに高いと断ったらクレテック煙草2箱(3万ルピア)まで値下がりしたので乗ってみた。
 辺りにはゴムボートもずらりと並ぶ。値段を聞いてみると50万ルピア。多くがムアラ・バル漁港の漁師という。
 アクアのガロンボトル数個の上にベニヤ板を張っただけのいかだはよく揺れた。体を水につけながら、いかだを押していくサガンさん(36)は、洪水で市場の売り子の仕事がなくなったため、近所の水路からいかだを借りてきた。
 住宅地は計画的な開発がされたためか、格子状に十字路が続き、ゴシック様式のような「こてこて」の装飾の邸宅が並んでいる。海軍兵士は、冠水は住宅地の800メートル東にあり、ジャカルタ中心部の治水を担うプルイット貯水場の水とそのままつながっていると話した。
 華人が、海に近く、洪水が多発するゼロメートル地帯に住むのは、1998年の5月暴動時に暴徒の標的にされた苦い過去とも無関係ではない。元々の居住地が北部に集まっていたということもあるが、住民の華人男性は「万が一の時は船で逃げる想定をしているからだ」と話した。
 別の華人男性(43)によると、これまでも冠水被害はあったが、ここまでひどかったのは初めて。冠水した家に残した貴重品が気になるという。
 水が引いたモール前に停めたトヨタ・フォーチュナーから、6人は乗れるであろうゴムボートを取り出し、せっせと空気を入れた。「うちは床も高くしていたが、ここまで水が高いと効果がなくなったな」とぼやいた。(吉田拓史、写真も)

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