「身動き取れない」 携帯も充電できず
2007年以来、最大規模の洪水に見舞われた首都ジャカルタ。中心部をはじめ各地が水没し、家から出られない市民が続出した。感電を防ぐため電気も止められた地域も多く、携帯電話も充電できず。友人や会社などに連絡が取れない状態が続いた。
■「首都まひ、もう嫌だ」 HI前ロータリー
早朝から冠水したホテルインドネシア前ロータリーでは、ホテルから出られず、途方に暮れる邦人や、歩道橋の上で水が引くのを待つ市民であふれた。
中央ジャカルタのスナヤンに向かうメリッサさんはトランスジャカルタのホテル・インドネシア前ロータリー停留所で足止めになった。「もう嫌だ。07年の洪水よりもひどくなっている。排水設備も機能していない。州政府は何をしていたのかわからない」と怒りをあらわにした。
■「ここは毎年水浸し」 カンプン・ムラユ
チリウン川が決壊し、近隣の町は大きな被害を受けている。東ジャカルタ区ジャティヌガラ郡カンプン・ムラユは水位が最高3メートルを達し、家屋の1階が水没。住民約2千人が帰宅できず、ヘルミナ病院が急きょ避難所として開放された。
水位が最高2メートルに達した同郡ビダラ・チナでも水没した家のそばで、住民らが一向に引かない水を心配していた。主婦のインダさん(48)は16日から、近くの国立学校に避難。「毎年家が水浸し。何とかならないものか」と話した。
■「経済成長したけど‥」 タナアバンの路地裏
「早く助けて。腰が痛くて動けない」。中央ジャカルタ・タナアバンの細い路地の家から避難できなくなり、年配の女性が国家防災庁(BNPB)の救助隊員に担がれて救助された。
朝目覚めた際、家が150センチほど冠水しており、身動きが取れなくなったという。救助された後も、恐怖で体が震えていた。我が子を必死に抱きしめながら救助隊員に「ありがとう、ありがとう」と語り掛けていた。
07年に発生した洪水の時も救助され、避難所生活を強いられた経験がある。「また避難生活かと思うと‥。経済成長はしたけど、庶民の生活はほとんど変わっていない。しわ寄せが来るのは私たちだ」と途方に暮れた様子。水遊びを楽しむ若者たちとは対照的に、今後に不安の顔色がうかがえた。(高橋佳久、上松亮介、小塩航大)