「クルマ、すぐ直します」 安さとスピードで勝負 日系メーカーで修行 路上の修理工集団 「ハジ・マリック」
都心を南北に走る中央ジャカルタ・スネン近くのクラマット・ラヤ通りの路上で、四輪車の塗装を専門にする修理工集団「ハジ・マリック」。日系自動車メーカーで働いていた修理工たちが開業して以来、交通量が激しく、二輪車と四輪車の接触事故が多発する大通りで、安さと技術を売りに顧客をつかんでいる。(小塩航大、写真も)
クラマット・ラヤ通りの道端に客引きをするメンバーが立つ。手を挙げて路肩の修理現場に車を誘導し、車体の状態や客を見ながら早速、価格交渉を始める。
「この程度のかすり傷なら30万ルピアで直しますよ」。顧客の間で交渉が成立すると、マリック・イブラヒムさん(36)ら修理工は素早く作業に取りかかる。傷がある車体の側面に新聞紙を貼り、紙やすりで磨く。その後、塗料で色を付け下ぬり、中ぬりや上ぬりを行う。わずか30分で2カ所のかすり傷は消え、新車のように黒光りする車体に生まれ変わった。
車の修理を依頼したサバリハムさん(62)は「すぐ修理してくれ、技術も高い。2年前から利用しているよ」と話す。自宅は近くの密集地にあり、細い路地を通る際はオートバイと頻繁に接触する。正規の修理場に行ったことはあるが、場所も遠く、費用もかかる。かすり傷程度なら近場で直してしまうという。
塗装は1日で最低5台仕上げる。価格は車体の状態によって異なり、25万〜150万ルピア。小さなかすり傷から車体全体の塗装まで行う。一日の売り上げは200万ルピア以上になり、オーナーのマリクさんの月給は700万ルピアに上るという。
修理工の7人は、西ジャワ州ブカシにある日系自動車メーカーの工場で、それぞれ契約社員として7年ほど勤めたが、職場になじめずに退社。「自分たちの力で起業しよう」と意気込んだものの、持ち寄った資本金はわずか5千万ルピア。店を構えることもできず、路上でできることからやってみようと、2009年に現在の場所で修理を始めた。
マリックさんは「自動車所有者が増加する中で、劣悪な路面や未整備の道路、交通渋滞などが原因で車の修理台数も増えてくると予測した。日系自動車メーカーで培った技術のおかげで客の信頼を獲得できている」と話す。通り沿いには同業者がずらりと並び、競合も激しいが、「価格も技術も一番だと思う」と自信を見せた。