よみがえる廃品 職人、修理して販売 スネンの伝統市場
近代的なショッピングモールが増加し、最新の電化製品などが飛ぶように売れているジャカルタで、昔ながらの廃品修理屋も脈々と商売を続けている。もう使えないだろうというようなものが職人たちの手で次々とよみがえっていった。
中央ジャカルタ・スネンの州営伝統市場パサール・ポンチョル。服飾や靴が中心の市場の奥まったところで、スレイマンさん(22)がパイプいすに金槌を振るっていた。力加減に強弱をつけてパイプいすの歪みを直している。
スレイマンさんは金槌の尖った部位でシートをこそぎ落とし、サビや汚れをパイプから布で拭っていく。きれいになったパイプに新しいシートを据え付けると、新品同様の輝きを放った。
スレイマンさんの商売はパイプいすの修繕屋。父の代から20年以上続く老舗だ。注文は主にオフィスや官公庁、ホテルから受けている。「値段は1脚につき5万ルピア(約440円)。1日に20〜50脚ほどを修繕する。売上は平均して1日50万ルピアくらいだよ」
一風変わった中古屋もある。ニキ・トマスさん(27)は中古の携帯電話のバッテリーを売る。店には籠に入ったバッテリーが並ぶ。ノキア、サムスン、ソニー・エリクソン‥。人気のブラックベリーのものはない。「修理屋が廃品業者からジャンク携帯電話を安く買うときに、修理ができない品は部品をばらして売る業者に回る。解体されたバッテリーがわれわれに流れてくる」のだという。
自動車関連の店も多い。ブヨン・アクマッドさん(52)の店には自動車のシートカバーやカーペットカバーがうずたかく積もっていた。トヨタ、ホンダ、スズキなど多くの車種を網羅し、1セット20万ルピア以上で、自動車整備工などに売るようだ。
ブヨンさんの店の並びには、ハンドル、クラクション、バンパー、スピードメーター、サスペンションなど自動車部品をばら売りする店が並んでいる。どれも廃車を解体するか、部品取り替えの際に廃棄された品という。
中古屋は廃品を引き取り、修理して付加価値をつけて再度売る手法をとる。故障品を持ちこんで、修理することも可能な店が多い。電化製品がひしめく。
日本製のアンティーク品もある。1980年代の任天堂のゲームソフトや76年発売のキヤノンの一眼レフカメラ「AE―1」も見受けられた。
オートバイのモータープラグを売るイワンさん(55)は「廃品の一部の電化製品は日本からコンテナで来たものもある。日本で捨てられたものがインドネシアで復活する。インドネシア人はクリエイティブなんだ」と語った。(吉田拓史、写真も)