「被災地の感情共有を」 子どもたちの声も紹介 東北の教師8人 学生と意見交換
東日本大震災で被害を受けた岩手と宮城、山形の東北3県の教員8人が28日、南ジャカルタのアル・アズハル大を訪れた。アチェで26日に開かれた2004年のスマトラ沖地震・津波の追悼式典に出席したほか、被災からの復興の過程を歩む教育や開発の現場を視察した教師団。「実際に被災地にいると自分たちの生活を立て直すことに精一杯になってしまうが、『自分だけじゃない』と思えれば癒される部分がある。感情と知識を共有をしたい」(岩手県久慈市立大川目中学校の久慈美加教諭=45)との思いを込め、学生らと地震・津波の被害の教訓や防災知識について意見交換した。(関口潤)
意見交換会は同大と国際協力機構(JICA)、国際交流基金が主催。学生約50人や市民団体関係者が参加した。
「私たちのふるさとが瞬く間に姿を変えてしまった」と振り返り、現在は「仮設だけれども、同じ校舎で学べるというのは幸せ」と語る宮城県石巻市立女子商業高校の藤村智美教諭(36)は、生徒のビデオメッセージを交えながら被災の様子と現状を紹介。
生徒らがつづった言葉には「老人と子ども優先で、中高生は物資をもらえないこともあった」「どれだけ大変だったか、どれだけ怖かったかを知ってほしい」と被災当時の困難や切実な思いがある一方、将来については「誰かの役に立つために看護師になりたい」「立派な社会人になって親孝行をしたい」と前向きな思いが並んだ。
子どもたちの心のケアの方法に関する学生の質問に対し、岩手県立宮古高校の小笠原潤教諭(54)は「子どもたちは実際に被災し、がれきを見てきた。復興・防災教育も重要だとは思うが、言葉が心に鞭を打ってしまうこともある」と述べ、「震災前の生活を取り戻すことを第一に考えている」と強調。
久慈教諭は防災について、「てんでばらばらになってもとりあえず逃げろ」という意味が込められた「津波てんでんこ」の教えが地域で伝えられており、そのような伝承が守られていた地域では犠牲者が少なかったと説明した。
アル・アズハル大国際関係学部のニシャ・アメリア・アグスティさん(20)は、日本政治について学んでいるが、文化面についても知りたいと思い会場に駆け付けた。「知り合いを亡くすなど、先生たちもそれぞれ問題を抱えているはずなのに、子どもたちの問題を解決するために自分自身を強く保っていることに感銘を受けた」と語った。
教師団は、開発途上国の現状や日本との関係、国際協力への理解を深めるために実施しているJICAの「教師海外研修事業」で22日から30日までインドネシアを訪問。帰国後は各校で児童・生徒の教育に役立てるほか、訪問で得た成果を一般に紹介する展示会の開催を予定している。