豚混入のミンチ騒動 屋台の食事に疑心暗鬼も カリマンタンにも飛び火

 豚を食することをハラム(イスラムの教義に沿わない)とするムスリムが大多数のインドネシアで、牛肉に豚肉を混ぜた合いびき肉が立て続けに摘発されている。ひき肉は、国民に広く愛されているバッソ(肉団子)の材料に使われており、波紋を呼んでいる。
 
 南ジャカルタのチプテ市場で12日、豚肉を牛肉に混ぜてひき肉を作っていた加工業者経営者と従業員3人が、食肉取引条例違反の疑いで逮捕されたことが発端。牛肉の高騰が混入の背景にあるとみられている。
 地元報道によると、牛肉の価格は現在1キロ当たり9万―10万ルピア程度だが、この業者はひき肉をその半額ほどとなる4万―4万5千ルピアで販売していたという。
 ジャカルタ特別州はその後の調査で、この業者のひき肉を使った団子を州内各地の屋台で確認した。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)州知事は牛肉の高値傾向は今後も続き、豚肉を混入する業者が出てくると予想。年末にかけ、肉類の消費が増える傾向にあることから、関係部局に、警視庁と連携した立ち入り調査などを通じ、悪徳業者の一掃を指示した。
 騒動は東カリマンタン州にも飛び火し、同州当局とイスラム指導者会議(MUI)同支部は17日までに、バッソを売る屋台50軒を調査。うち7軒で合いびきミンチが見つかった。
 インドネシアでは、MUIがイスラムに沿った食品であることを認証し、消費者にラベルで周知するハラル認証の制度があるが、屋台での食事まではカバーされていないのが現状。
 ジャカルタ州内では「以前から牛肉が高くなるとのうわさが上がっていた」と、比較的平然と受け止めるムスリムが多い一方で、教義に沿った生活を重んじるムスリムには疑心暗鬼が広がっているようだ。
 東ジャカルタのイベント関連業アユ・オクタさん(22)は「ムスリムの1人として、業者には強く反対する」と憤る。問題発覚以後、安心できないとして、バッソを食べることを控えているという。15日付の英字紙ジャカルタポストは売り上げが半減したとする南ジャカルタの屋台の声を伝えた。(道下健弘)

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