中級ホテル建設合戦 MICE需要や観光開発進み 内外企業が運営に本腰 中間層拡大も追い風
ホテル運営を手掛ける内外企業が相次いで、低予算で宿泊できる中級ホテルの運営に本腰を入れ始めた。中核都市でのMICE(研修、視察、国際会議、国際展示会)需要の高まりや地方で観光開発が進んでいることが理由の一つだ。中間層の拡大も追い風に、大手ホテルチェーンによる需要の取り込み合戦が熱を帯びてきている。
インドネシア・ホテル・レストラン協会のウィルヤンティ・スカムダニ会長は、来年の業界見通しについて、ジャカルタやバリでは高級ホテルを中心に増加するとした上で、「地方や離島などでは、中級ホテルの建設が増える」と予測した。
各ホテルチェーンなどが新たに建設を予定している中級ホテルの宿泊価格で、主流となっている価格帯は1泊40万―50万ルピア(約3500―約4300円)ほど。グレードでは、大部分が一つ―三つ星ほどの星付きホテルになるとみられる。
不動産開発のインティランド・ディベロップメント社は12日、今後2年以内に中級ブランドで計31ホテルを展開する計画を明らかにした。建設予定地は、西ジャワ州ボゴールや南スラウェシ州マカッサル、北スラウェシ州マナドのほか、バリ州デンパサールなど。
チプトラ・グループのチプトラ・プロパティー社は来年、西ジャワ州バンドンや中部ジャワ州スマラン、ブンクル州ブンクルなど7都市に中級ホテルを建設する方針を明らかにしている。投資額はホテル1軒当たり平均450億ルピア(約3億9千万円)に抑える。
米系ホテル会社アストン・インターナショナル社は先月末、来年中に国内に40ホテルを新設する計画を明らかにした。うち27ホテルが中級クラスで、現在運営している同クラスの16ホテルと合わせると、来年末には同社ホテルに占める中級ブランドの割合は現在から1割増の約4割になる見込み。
同協会によると、今年12月時点で協会が把握しているインドネシア国内のホテル数は約1530軒ほどで、客室数では24万室に上る。ウィルヤンティ会長はホテル業界の活況が続いていることから、来年中には少なくとも5万室ほど増えると予想している。
今年のホテル産業への投資額も高い伸びを示しており、今年は前年比約230%増の8億ドル(666億円)規模に膨らむ見込み。
そんな中、エネルギーや通信事業などを幅広く手掛けるバクリー・グループも収益が見込めると判断し、中級ホテルの運営に乗り出すことを明らかにしている。
子会社のバクリー・ニルワナ・セメスタ社を通じ、バリ島やジャカルタ、西ジャワ州バンドン、東カリマンタン州バリックパパンで中級ホテルを建設。同社のヘヌ・クスダルヨノ取締役は「格安航空(LCC)の路線がいつも混雑している都市に参入する」と話した。
中央統計局(BPS)が発表した今年10月の観光統計によると、主要観光地20州のホテル稼働率は54.90%で、微増傾向にある。首都の高級ホテルでは、軒並み90%を超えるところが多く、日本を含む海外からの出張者であふれている。