「Ringo」売り込め 青森輸出協議会が視察 「親日」生かし販売増を狙う
リンゴなど農水産物の販売拡大を目指し、青森県の輸出促進協議会メンバーら15人が20―23日、ジャカルタを視察した。日本市場の縮小が見込まれる中、台湾に続く有望市場と見据えるのは、世界第4位の人口で富裕層の絶対数も多いインドネシア。「親日国」であることを生かし、ブランド認知拡大を狙う。(田村慎也、写真も)
「手間暇をかけてつくっている。ほかの国のリンゴと同じには扱わないでほしい」
全国有数のリンゴ生産者「山野りんご」の山野豊代表取締役は、声を大にして、ストア・マネジャーに訴えた。
視察団が訪れた中央ジャカルタの高級ショッピング・モール「グランド・インドネシア(GI)」。GIにあるスーパー「ランチマーケット」のリンゴ売り場面積のほとんどを、米国産が占めている。間引きして丹念に作られた青森産リンゴは、大ぶりで甘みとなる蜜が多いが、値段は米国産の3倍以上する。販売価格は、「むつ」では100グラムあたり1万3千ルピア(約110円)、「ふじ」では100グラムあたり1万8千ルピア(約152円)。米国産よりさらに3割ほど安い中国産も流通しており、価格競争では太刀打ちできない。
英国、スイス、ドバイなどでリンゴを販売してきた山野代表は「Appleではなく、Ringoと呼んでほしい」と、試食や説明の仕方とともに店舗担当者に提案。高品質ブランドとして差別化して販売する必要性を強調した。
リンゴの主要輸出先となってきた台湾は、市場の9割を青森産が占める。台湾では、贈答用の高品質ブランドとして高所得層に訴える販売から始め、支持を獲得してきた。視察団メンバーは「インドネシアも親日国。良いものに対する憧れもある」と口々に話す。
昨年の県内リンゴ生産45万トンのうち、台湾への輸出は約2万トン。九州での消費量に匹敵する大きな市場に成長した。
インドネシアへの輸出は年間50トン(2010年)と台湾の400分の1の規模だが、06年の27トンから拡大傾向にある。贈答用から知名度を広げる戦略を、台湾の10倍の人口を持つインドネシアでも展開する方針だ。
インドネシアのリスクは、税関での手続き遅滞や輸入規制の変更。青森県国際経済課の井畑勝博総括主幹は「規制が目まぐるしく変わるようでは、長期的な計画が立てられない」と漏らす。生鮮食品であるリンゴは、日にちがたつ分、品質が落ちていく。
商社「ファースト・インターナショナル」(八戸市)は、今年4月から月に1回5トン分のリンゴをジャカルタに輸出し、GIなどで販売してきた。しかし、6月からは検疫規制の変更で、スラバヤ経由での通関を余儀なくされるなど、苦労も多いという。
インドネシアで青森産リンゴは定着するか。GIの1―9月のリンゴ販売は約1億ルピア。6カ月の販売ながらも、青森産が全体に占める比率は販売額ベースで25%に達し、徐々に存在感を高めている。