バリ人謝罪で和解 「閉鎖的な移住者」 先住者が改善要求 ランプン住民衝突
先月27―29日、12人の死者を出したランプン州南ランプン県の住民衝突で4日、難航していた和解が成立した。交通事故を発端に発生した村落の対立が1万人規模の衝突に発展した背景には、大規模な開発が進むスマトラ島南端の同州でくすぶってきた先住者ランプン人と移住者バリ人の民族対立がある。独自の慣習を固守する一方で、閉鎖的な社会との批判が向けられたバリ人側が謝罪し、地元社会との融和を誓う形で事態収束を図った。
衝突発生から1週間。和解協議は難航した。ランプン人側はバリ人集落に対し、カリマンタン島など別の地域への移転を要求。バリ人集落の住居焼き討ちが相次ぐなど事態は深刻化した。
5日、州都バンダルランプン市で、アゴム村などランプン人集落とバリ・ヌラガ村などバリ人集落の長老が対話。バリ人側がランプン人側に謝罪し、もし再び問題を起こした場合は追放措置を受け入れることや他民族との調和などを誓った。
バリ人集落の1600人は、県外の避難先から村へと帰還を続けているが、警察・国軍は再発を防ぐため、衝突発生現場のカリアンダ郡周辺への駐留を一定期間続ける方針だ。
些細な出来事が民族衝突に発展した。有力紙コンパスによると、27日、バリ人集落の男性がランプン人集落の女性に性的嫌がらせをして、その拍子に女性がオートバイから落ちてけがをした。女性は村に戻って出来事について伝え、激昂した村民がランプン人集落数村の数千人とともにバリ人集落などを襲撃した。
■移民排斥の標的にも
ランプン州は他島・地域からの移住者が多数派を形成する移住者社会。同州のバリ人の多くは、1963年のバリ島アグン山噴火で農地を失い移住し、州内各地にバリ人集落が点在している。
ランプン出身者によると、バリ人コミュニティはヒンドゥー教徒で宗教が異なり、独自の慣習で閉鎖的なことから、他のコミュニティから孤立し、激昂しやすいとされるランプン人による移住者排斥の標的になることもあるという。ランプン人によるバリ人集落襲撃事件は、南ランプン県で今年1月にも起きていた。
ランプン州への移住政策はオランダ植民地時代の20世紀初頭から始まり、スハルト時代のトランスミグラシ(移住政策)まで続いた。増え続ける移住者が虫食い状に土地を開墾した結果、各民族の集落がモザイク状に分布する。先住民のランプン人の人口は1割超に留まり、地理的に近いジャワ島出身者が6割超を占めている。