PLNと売電契約 電源開発と伊藤忠 40億ドルの大型IPPで
電源開発(Jパワー)と伊藤忠は、IPP(独立電力事業者)としてアジアで最大規模となる総事業費約40億ドルの卸発電事業に乗り出す。6日、両社と地場系石炭開発のアダロ・エナジー社の事業会社は、中部ジャワ州バタン県で計画する合計出力2千メガワット(MW)の石炭火力発電事業で、国営電力会社PLNと25年の長期売電契約を結んだ。同事業では、大蔵省と昨年運営を開始した政府系のインドネシア・インフラ保証基金(IIGF)が売電などについて保証する初のケース。インドネシアは政府による保証を明確にすることで、今回の事業を先行事例として今後もIPPを進めていきたい考えだ。(川上幸夫、写真も)
同事業は、インドネシア政府が推進するPPP(官民パートナーシップ)による開発プロジェクトをまとめた「PPPブック」に盛り込まれている事業として、初めて実行された事業で、三社は今年6月、国際入札により中部ジャワ州バタン県の石炭火力のIPP事業の優先交渉権を獲得していた。
三社は同事業の建設・運営を行う事業会社のビマセナ・パワー・インドネシア社(電源開発34%、アダロ社34%、伊藤忠32%)を設立。超々臨界圧(USC)技術を採用し、25年間PLNに売電する。2012年に着工。2016年後半に操業開始する予定。
日本政府はインフラ輸出を成長戦略に掲げており、中国企業がインドネシアの電力事業で攻勢を強める中、官民が協力して日本の技術力を生かした電力インフラの輸出に力を入れている。USCは日本が得意とする技術で、インドネシアでの採用は初めて。熱効率が良く環境負荷が少ないため、石炭を多く抱えるインドネシアで今後、同技術の活用が有望視されている。
6日、ビマセナ社とPLNの売電契約や、ビマセナ社と大蔵省、IIGFの三者の間で保証に関する調印が行われた中央ジャカルタの経済担当調整相事務所には多くの関係者や報道陣が詰め掛けた。調印式に出席したハッタ・ラジャサ経済担当調整相はスピーチで、民間資金を使ったPPPによるインフラ整備の必要性を強調。今後、同事業が先行事例となりPPPによるインフラ開発が進んでいくことに期待を示した。
バペナスの開発計画によると、政府はインフラ開発の必要資金の大部分を民間資金でまかなう計画を打ち出している。インドネシア政府は昨年、PPPを促進するために、事業の政府保証機関としてIIGFを設立。民間企業のPPPへの参画を促しているが、資本規模が限定的であるなど不確定要素もあり、今後の同事業の動向が注目される。