石炭事業めぐり泥仕合 英ロスチャイルド家と バクリーグループ
混迷が続く財閥バクリーグループの石炭事業をめぐり、同グループと英ロスチャイルド家の投資家ナサニエル・ロスチャイルド(通称ナット)氏の間で綱引きが続いている。きっかけは今年9月、バクリー傘下の石炭大手ブミ・リソーシーズ社の株式29.2%を保有する英ブミ社(ロンドン株式市場上場)が、「インドネシア事業、特にブミ・リソーシーズ社内に財務上などの不正がある恐れがあり、監査を実施する」と発表したこと。バクリー側は「(英ブミ社の共同会長を務める)ナット氏が、インドネシアの石炭事業を手中に収めようと、故意に株価を下落させようとしている」と批判。バクリー側はこのほど、経営難に陥っている英ブミ社から、グループの石炭事業を切り離すことをブミ社株主に対して提案するなど、泥仕合が繰り広げられている。
英ブミ社はバクリーとナット氏が2010年11月、両者が保有する石炭会社の株式交換を通じて、設立された持ち株会社。だが、9月の発表のほか、昨年10月にもブミ・リソース社に対してガバナンスを疑問視する発表を行っており、取締役会などで両者の対立が続いてきた。この影響のほか、石炭価格はこの2年ほど下落傾向にあり、ブミ社の株価はピーク時の約1割まで減価している。
ブミ社の今月11日の発表によると、バクリー側は保有するブミ社株式23.8%とブミ社が保有するブミ・リソーシーズ社の株式29.2%のうち10.3%分を交換するほか、残りの18.9%についても今年の12月下旬までに買収することやブミ社が保有するインドネシアの石炭大手ベラウ・コール・エナジー社株式84.7%の買収を提案。バクリーはグループの中核とも言えるブミ・リソーシーズ社への監査に反撃した格好だ。
しかし、ロンドン市場の証券アナリストらは、バクリー側の提案が受け入れられた場合、約12億ドルの資金が必要となるが、負債を多く抱えたバクリー・グループが調達できる可能性は極めて低いとしており、提案が実現するかには懐疑的。今年4月には4億3700万ドルの債務不履行騒動が浮上。ブミ・リソーシーズ社は今年上半期に3億2200万ドルの最終赤字を計上したほか、傘下の通信会社も債務支払いの遅延のため、証券取引を停止された。
英経済紙フィナンシャルタイムズによると、グループ全体の負債は40億ドルを超えており、経営は危機的な状況に陥っているとの見方がアナリストの間で支配的だという。
バクリーグループは42年に創業した国内最大級のプリブミ(土着のインドネシア人)系財閥。財閥の成長に寄与した創業者長男のアブリザル・バクリー氏はゴルカル党党首を務め、同党は2014年大統領選に同氏を擁立することを決めている。