歴史を語るガラス工芸品 ルダナ美術館に寄贈 ジャカルタ在住のレイコさん バリ島ウブド
ジャカルタに住んでほぼ半世紀になるレイコ・ルスタムさんは、インドネシア各地で買い集めた歴史的なガラス工芸品のコレクション千点以上を、このほどバリ島ウブドのルダナ美術館に寄贈した。同美術館の創設者ニョマン・ルダナさんとは40年以上の付き合い。これまで日本の美術館からも展示の申し出があったが「ここならスペースも十分にあり、大勢の人にガラス細工の美しさを知ってもらえるから」と寄贈を決めた。(バリ島ウブドで北井香織、写真も)
レイコさんは1964年、インドネシア人男性と結婚しジャカルタへ移住。香川県高松市生まれで、長曽我部家の子孫にあたる。ジャカルタの邦人社会では水泳教師として知られ、趣味のダイビング旅行のかたわら骨董品を集めた。その中でも特に魅かれたのはガラス工芸品だった。「まず光を受けてキラキラと輝く見た目の美しさ、陶器とは異なる繊細さや、気持ちがぱっと華やぐ雰囲気が好きです」とレイコさんは話す。
白っぽく「銀化」した紀元前のボトル、表面を削って立体的な模様を施したボヘミアグラス、精巧なカットが光を屈折、反射させる薩摩切子。どれも当時の素晴らしい技術と美意識を伝えるものだ。マジャパヒト王朝時代のものを含む、トンボ玉と呼ばれるビーズのコレクションも大量にある。一連一連十分なスペースを割いて示す価値のあるものだ。
美術館に展示する上での課題は、作られた年代、地方、用途などを明らかにすること。「記録がないので、今はおおよそのことしか分からないが、フランスの専門家などに写真を見せるなどして、できるだけ正確な情報を集めたい」とルダナさんは話す。そして「ガラス工芸は今、バリ島で盛んになりつつある芸術分野。レイコさんのコレクションの価値を理解する人は大勢いる。展示はバリ島のガラス工芸の発展にも大きく貢献するだろう」と今回の寄贈を喜んだ。レイコさんは、これからはジャカルタとバリを頻繁に往復し展示を見守っていくつもりだ。