34年で65万語突破 イ語―日本語の尾崎辞書 使いやすさ追い求め

 大学でインドネシア語を学び、駐在員などとして50年以上インドネシア語に触れてきた尾崎賢悟さん(74、千葉市在住)が編纂(へんさん)するインドネシア語―日本語の電子辞書「尾崎辞書」の収録語数が、65万語を超えた。34年にわたる力作で、「バージョン13」まで更新した尾崎さんは「たくさんの人に辞書を使って、生きたインドネシア語を勉強してもらいたい」と話している。

 尾崎さんは拓殖大学でインドネシア語を学び、卒業後は山陽国策パルプ(現在の日本製紙)に入社。1974年から南スラウェシ州に4年間駐在した。その後も丸紅現地法人に務めるなど、インドネシア社会で長年働いてきた。
 辞書編さんは市販の辞書でインドネシア語の新聞や雑誌を読むのに苦労した経験から、「便利な辞書を作ろう」と90年に開始した。複数の翻訳家や通訳らが作る英和・和英の電子辞書「英辞郎」を参考に、パソコンや携帯端末で気軽に参照できるよう工夫を凝らした。
 地元メディアを読んで意味がわからなかったり、未収録だったりする単語を見つけたら都度、収録語句を追加する作業を積み重ねる。負担は重く「強迫観念のようなものに動かされてきた。ただ、ここまできたらやめられない」と話す。2019年の完全帰国後も、連日朝から夜までパソコンに向かい辞書作りに取り組んでいる。
 尾崎辞書は多くの紙の辞書と異なり、接頭語や接尾辞を外さずに単語まるごとを入力するだけで検索できる。ウィンドウズ対応のパソコンにインストールすると、ウェブサイトに並ぶインドネシア語にカーソルを置くだけで意味を表示する機能を備えるなど、利便性を向上させた。会話表現やことわざ、俗語などの現代用語も約2万語収録する。
 尾崎辞書を活用する学習者やインドネシア関連の専門家は増えた。一つの単語に訳語をたくさん収録する手法を専門家から批判されたこともあるが、実用性重視の方針を貫く。
 近年は技術の発展により、利便性が高い翻訳アプリが普及している。尾崎さんも辞書作りに活用する。ただ、文章の細かいニュアンスや単語一つ一つの意味を知るために辞書が不可欠なことに変わりはない。「一つの単語にたくさんの意味や用例を盛り込むやり方を続けてきて、結果的によかった」と語る。
 還暦を迎えた時や一定の収録語を達成した時期など、区切りを付けようと考えたこともあった。15年に一過性脳虚血発作をわずらい、帰国後もがんを発症するなど近年はリハビリを続けながらの編さん作業を経験した。「それでもやめられないのは、辞書を使う人から感謝や激励のメールを頂くから。やっててよかったと思う」と語る。
 地域ごとにさまざまな単語があり、年々使い方が微妙に変化するインドネシア語と向き合う日々に終わりはない。「より正確に訳す。会話して気づきを得る中で学ぶインドネシア語は非常に奥が深い」。
 尾崎辞書は7000円。無断複製などをしないことが購入の条件となる。問い合わせは尾崎さん(ozaki323@yahoo.co.jp)へ。

日イ関係 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly