音の調和、奏でるガムラン スルヨララス・ジュパン 故中野さんへ在外公館長表彰
邦人ジャワガムラン楽団「スルヨララス・ジュパン」は6日、東ジャカルタのタマンミニ・インドネシア・インダ(TMII)のジョクジャカルタ館で「第4回日本語解説付きワヤンワークショップ」を開催した。イベントは同楽団を主宰して57歳で亡くなった故中野千恵子さんの3回忌に合わせ実施。来場者約200人が見守る中、中野さんへの在外公館長表彰の授与式も行われた。
「こだわりのある人。自分でこれだと思うと一直線。ジャワの世界にどっぷりと浸かっていた」。同楽団幹事のひとり、高岡結貴さん(62)は中野さんの人柄をこう回顧した。
中野さんは夫の駐在に帯同して2002年にインドネシア生活をスタートした。ガムランを学び始め、夫の帰任が決まった後もガムランを続けるためジャカルタに残り、18年にスルヨララス・ジュパンを発足。コロナ禍の22年7月1日に急逝した。
ガムランを通じた日イ相互交流に貢献したとして昨年9月、在外公館長表彰を受賞。この日の授与式は、在インドネシア日本大使館の永井克郎次席公使から、中野さんの師範を17年間務めたンガティマンさん(55)へ手渡された。
ンガティマンさんは「集中力や気遣い、愛情。彼女の演奏は、全てを表現することが人生の一部であるかのようだった」と故人を偲んだ。
一方、公演会ではワヤン・クリット(影絵芝居)の上演を前にスルヨララス・ジュパンが仲間と音を調和しながら5曲を演奏。ジャワ舞踊やンガティマンさんが採譜した五輪真弓の「心の友」、歌詞に「千の恵み、引き継いだ想いを胸に」と中野さんへの思いを込めたオリジナル曲も披露した。
その後、希少価値の高いワヤン・クリットの上演に移り、来場者は食事をとりながら鑑賞。ダラン(人形遣い)に釘付けになる人、ガムランの音に揺られる人など思い思いの時間を過ごした。
来場者のうち8割は同楽団の公演を初鑑賞。また、半数がガムランの音に初めて触れた。2月に赴任したチカラン在住の小林佐嘉子さん(28)は「インドネシアの伝統芸術に初めて触れた。目の前でのガムラン演奏や、のびのびとした環境でワヤンを見られて贅沢な一時だった」と喜んだ。(青山桃花、写真も)