海外の大学に門戸 高等教育法が成立 慎重論に配慮、制約も

 海外の大学がインドネシア国内に拠点を開設することを認める条項を盛り込んだ高等教育法案が13日、国会本会議で可決された。海外の教育基準を取り入れることによる国内の高等教育の質向上を目指したものだが、外国の教育機関の参入には警戒感も根強い。法案審議では賛否両論が巻き起こり、学科の内容を届け出制にするなど、一定の制約を設ける内容となった。

 地元紙によると、高等教育法では、海外の大学がインドネシア政府の認可を得た上で、国内にキャンパスや研究所などを設置できるとした。
 国会第10委員会(教育、観光、スポーツ)のアグス・ヘルマント委員長(民主党)は「国内で世界水準の教育を受けられるようになるため、これまで留学しがちだった優秀な学生も国内にとどまるようになる」として、海外大学の参入による効果を強調した。
 インドネシアでは近年、海外の大学がインドネシアの大学と提携し、留学せずに国内で海外のカリキュラムを履修、学位を取得できるコースを開設。海外での高額の生活費も不要の「国内留学」として注目が集まっており、新法制定で海外の大学がインドネシアに拠点を開設し、独自の活動を展開する契機になりそうだ。
 国会審議では、学生が海外教育機関の影響を直接受けることへの警戒感のほか、優秀な人材の海外流出、国内大学が営利主義に傾倒することへの危惧などから、反対意見も持ち上がった。
 こうした声に配慮し、同法では、海外の教育機関の設置場所については政府が定め、国内の高等教育機関との協力関係構築や開設学科などの申請、教員の採用はインドネシア人を優先することを求めた。無秩序な学費の上昇を避けるため、政府は今後、学費についての規定も作る方針だ。
 ムハンマド・ヌー教育文化相は「我々は参入大学が非営利目的であり、憲法と国是であるパンチャシラ、我が国の宗教の多様性を支持する場合にのみ許可する」と理解を求めた。
 高等教育法は、2010年3月、公立・民間の教育機関運営団体を教育法人の形態に統一すると規定した教育法人法(2009年第9号)が、教育機関の商業化を助長するとして、憲法裁判所が違憲と判断したのを受け、策定された法律。
 教育指導指針やカリキュラムの許認可制度、大学職員の人事、大学運営費における研究費の配分率、国立大の学費基準設定のほか、国立大学に低所得者の学生枠を最低20%設けることを義務づけるなど、教育機会の拡大に関する規定も盛り込み、大学進学率(高校卒業者の進学率26%=2011年現在)の引き上げを目指す。
 これまで法案審議で指摘されてきた同法の問題点について、インドネシア大名誉教授のエミール・サリム元環境相は「指導指針を大臣令で規定したり、大臣が大学の自治運営状況を判断したりするなど、普遍的な原則である大学自治権に抵触する条項もある」と指摘。今後、教育関係者が憲法裁で違憲審査を起こし、条項無効を訴えることになるだろうとの見方を示した。

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